ウクライナ情勢が緊迫しています‥‥。
今日配信された日経電子版のメールサービス、【Editor's Choice】「編集局長が振り返る今週の5本」には、
次のようなことが書かれていました。少し長くなりますが引用させていただきます。
『「検察官」「死せる魂」などの作品で知られる19世紀のロシアの作家、
ニコライ・ゴーゴリは今のウクライナの出身で、同地を舞台にした小説を多く残しています。
その一つに「紛失した国書」という作品があります。
語り手の「わし」が明かす今は亡き祖父の物語。
ウクライナ地方を中心に一大勢力を誇った軍事的共同体のコサックの一員だった祖父は
地元の大総帥からロシアの女帝、エカテリーナ2世に国書を届けるように命ぜられ、
その書を帽子の裏に縫い付けて急ぎの旅に出ます。
ところが立ち寄った酒場で酔って眠ってしまい、大事な帽子を盗まれます。
悪魔の仕業とみた祖父は酒場の亭主の教えに従い森の中へ。
そこで会った妖女との命を賭けたトランプ賭博に勝利し、帽子を取り返します。
宮殿についた祖父はエカテリーナ2世に謁見し、たくさんのおカネを褒美にいただくというストーリーです。
たわいもない怪奇談ですが、そこにはロシアに振り回されたウクライナ、
そしてゴーゴリ家の悲哀が垣間見えます。
東西の世界を結ぶ要路にあり、豊かな穀倉地帯でもあったウクライナは
周辺国に翻弄され続ける歴史を歩みました。
そんな歴史を変えたのが15世紀ごろから同地で興隆したコサックでした。
17世紀に入り勢力を急拡大、同世紀半ばには当時のウクライナの支配者だったポーランドを
壊滅寸前にまで追い込み、ついにウクライナの独立を勝ち取ります。しかし、それもつかの間。
ポーランドの反撃に悩まされたコサックは一転、自国をロシアの保護下に入れることを決断します。
それがあだとなり、今度はエカテリーナ2世の治世下の1780年代に
ウクライナはロシアの一地方に組み込まれてしまいます。
実はゴーゴリ家もエカテリーナ2世には少なからぬ影響を受けています。
「ニコライ・ゴーゴリ」(青山太郎著)によれば、
ゴーゴリの祖父は地元の名家の娘を妻にして地主となるものの、
エカテリーナ2世がウクライナに農奴制を導入。貴族の称号がないと土地保有ができなくなるため、
祖父は昔のコサックの連隊長だった「ゴーゴリ」という名の人物を勝手に自分の家系図に組み入れ、
「ゴーゴリ=ヤノフスキー」の姓を名乗ります。
この工作が効を奏して祖父は貴族台帳への登録に成功、土地没収を免れます。
大作家となった孫は祖父のもともとの姓だったヤノフスキーをはずし、
「ゴーゴリ」として歴史に名を残すことになります。ゴーゴリは冒頭に紹介した「紛失した国書」で
エカテリーナ2世を悪者として描くことこそしませんでしたが、
祖父の敵としてわざわざ妖女を登場させたのは女帝への当てつけとも見えますし、
酒場の人々に語らせた「悪魔と大ロシア人にかっぱらわれたものは二度と手に戻らない」という言葉は
ウクライナ人のロシアへの苦々しい心情を反映したと思われます。‥‥』
う~む、なるほど‥‥。とても勉強になります。
ウクライナとロシアには、複雑な「歴史的経緯」があるのですね‥‥。
さらに、先ほどの配信記事には、次のようなことも書かれていました。
『日本からはるか遠くの話、とばかりも言っていられません。
ロシアは天然ガスの生産で17%の世界シェアを握り、原油も11%を占めています。
ウクライナ侵攻が現実になれば、すでに高騰するエネルギー価格がさらに上昇、
世界経済の混乱を招くのは必至です。ロシアへの強力な制裁は世界経済への「返り血」を伴いますが、
手をこまぬけば世界の秩序は揺らぎます。
2014年のロシアによるクリミア併合に続いて今回もロシアへの有効な対抗手段を打ち出せなければ、
台湾統一を虎視眈々(たんたん)と狙う中国を止めるのも難しくなるでしょう。‥‥』
はぃ、分かりました。日本から遠く離れた出来事だと傍観することはできないのですね。
なお、「悪魔と大ロシア人にかっぱらわれたものは二度と手に戻らない」という言葉も気になりました。
この言葉からすると、日本固有の領土である「北方領土」の返還も、困難な道のりになりそうです‥‥。