日経新聞では、今年になってから、
カルロス・ゴーン・日産自動車社長の『私の履歴書』の連載が続いています。
そろそろ連載の終了が近づいてきたので、
この辺りで、第13回から第20回までの連載記事で、
私の印象に残った記述を、この日記に書き残しておこうと思います。
『ビジョンを社員に浸透させるのに重要なのは共通の言語だ。
私はそれが数字だと思っている。
日本人とフランス人には大きな文化の違いがある。
フランス人は物事を決めるのが早いが、決定事項の理解は個人に任されているので
行動する時にばらばらになることが多い。
一方、日本人はなかなか決められないが、
いざ決まれば目標に向かって一つにまとまる力がある。』
『両者(注:日産とルノー)の違いを埋め、力を最大限引き出すには、
双方で共有できるわかりやすい目標が必要だ。それが数字である。
数字は多様な言語、文化の中で育った私が考え抜いた共通の言語なのだ。』
『働き手は仕事の成果、すなわち会社への貢献で評価されるべきだ。
成果を出したのに出していない人と同じ賃金や昇進ペースでは公平性を欠く。
そう、重要なのは公平性だ。
日産はまず、管理職以上に業績に応じて報酬が変わる
インセンティブ制を導入した。』
『日産自動車の再生とは何だったのか。次の世代に何を伝えるべきか。
それらを踏まえ、当時の記憶や共有できる行動規範を残せたら、と私は考えた。
写真集という「過去」ではなく、これからも続く何かである。
それが「日産ウェイ」だ。
05年のある週末、役員を箱根の合宿所に集め、缶詰めになった。
何度も意見を持ち寄り、議論した多くのアイデアを詰めた。
そこで決まったのが5つの心構えと5つの行動だ。
私がずっと口にしてきた the power comes from inside
(すべては一人ひとりの意欲から始まる)という言葉を出発点に導き出した。』
『心構えには「異なった意見・考えを受け入れる多様性」、
「最小の資源で最大の成果」、
行動には「競争力のある変革に向けて継続的な挑戦」などがある。
全世界の社員は今もこれを共有している。
人間のモチベーションを左右する最も重要なものは
帰属意識(belonging)だと思う。日産の社員には日産の社員、
働く意欲の源泉になる。』
う~む、なるほど……。
グローバルな時代に、お互いの文化を越えて同じ目標を共有するためには、
数字が共通の言語になるという、ゴーン社長のご指摘は大変勉強になりました。
また、日産自動車の5つの心構えのうち、
「最小の資源で最大の成果」という言葉がありました。
この言葉を読んで、地方自治法第2条にも、
『地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、
住民の福祉の増進に努めるとともに、
最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。』
という規定があることを思い出しました。
「最小の資源で最大の成果」と「最少の経費で最大の効果」
官公庁にも民間にも、「共通する言語」があるのですね……。