最近の論壇は、政府に対する増税批判が多いような気がします。
今日の産経新聞の「正論」では、拓殖大学大学院の遠藤浩一教授が、
「基本理念なき改造に空しさ漂う」と題し、次のように述べられています。
『散々指摘されてきたことだが、増税を否定し、
財源の見通しも立たないまま極端な再分配政策を提示して政権を獲得した民主党に、
増税を提起する資格があるのかという素朴な疑問は、等閑に付すわけにいかない。
状況が変われば政策も変わるとは言わせない。
2年半前の政権交代時からわが国の財政状況は同一方向で悪化しているのみならず、
民主党政権自体が悪化要因となっているからである。』
また、雪斎先生は、自身のブログ「雪斎の随想録」で、
『政治の文脈で大事なのは、「何をするか」ではなく「どのようにするか」である。
雪斎は、日経225が13000円を超えた時点で消費増税断行と唱えている。
野田内閣に必要なのは、こうした株価上昇に現れた景気回復への手順を示すことである。
これを欠いたまま消費増税の議論をするのは、
ミルクと砂糖を先に出して肝心のコーヒーを中々出さない喫茶店のようなものである。
そうでなければ、
「人参が嫌いな子供に、料理の工夫もせず、無理強いして食わせようとする母親」のようなものである。
この母親における「無理強い」の印象が強まれば強まるほど、拒絶反応が強くなる。
野田が「増税」志向で頑張れば頑張るほど、それを受け容れようという気分が萎えてくる。
そのことは、世論調査の結果にも表れているのではないか。』と述べられています。
一方、星岳雄カリフォルニア大学サイディエゴ校教授は、日経新聞経済教室の「危機に克つ」シリーズで、
『政府はようやく社会保障と税の一体改革として、
財政再建に一歩を踏み出す覚悟を決めたかにみえる。
被災地や景気動向への配慮も大切かもしれないが、
信頼できる中長期的な財政再建計画を示すことが急務である。
これ以上の先送りは景気をかえって悪化させる可能性が高い。
世界経済は多くの危機を体験してきた。
その歴史から学ぶべき最も重要な教訓の一つは、
抜本的対策の先延ばしは事態をさらに悪化させるというものだ。』
う〜ん、いずれも説得力のある説明ですよねぇ‥‥。ますます分からなくなります。
経済学の知見では、消費税増税についてはどういう正解が導かれるのでしょうか?
浅学非才の身でいろいろと思考をめぐらせていたところ、
今日から日経新聞の「時事解析」で、「消費増税の論点」の掲載が始まりました。
絶妙のタイミングなので、これからの連載が楽しみです。以下は今日の解説からの抜粋です。
・消費税率を5年間にわたって引き上げた場合でも、実質成長率の押し下げ効果は
年平均0.3〜0.5ポイントにとどまる。
消費税は広く薄く課税するため、増税の影響が法人税や所得税より小さい。
・財政再建で社会保障への不安を晴らすことができれば、
個人消費を刺激する可能性もある「非ケインズ効果」が発生する。
・「日本の家計には100兆円を越える過剰な貯蓄が存在する可能性がある」。
その一部が消費に向かうようなら、景気悪化の防波堤になり得る。
・一方、名目の雇用者報酬はピーク時より12%少ない。
雇用・所得環境が改善しないと非ケインズ効果も限られる。