しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

まずは「一冊」を

「今夜新たに読む本は未知の世界の旅ぞかし。
 初めの程は著者とわれ少し離れて行くも好(よ)し」

与謝野晶子の歌の紹介で始まる昨日(10月1日)の産経新聞「主張」は、
『読書週間 本との旅は「各駅停車」で』でした。

読書を旅になぞらえて書かれた社説は、読書というものの本質をさりげなく語っていました。

『灯火親しむべき秋の読書週間(10月27日〜11月9日)に入っている。
 時間がゆったりと流れていく夜長を、読書の楽しいひとときとしたい。
 今年の読書週間の標語は「本と旅する 本を旅する」だ。
 晶子の詩にもあるように、読書は旅になぞらえられることが多い。
 車窓の景色を眺め、見知らぬ土地の人とふれあい、
 ときに自らとも対話してみるのが旅の醍醐味(だいごみ)だとするなら、
 本との旅も特急列車で急ぐのではなく、各駅停車でゆっくりと楽しみたいものだ。
 ともすれば知識や情報をより短時間で得ることを読書の目的としがちだが、
 読書の本当の喜びを知るには、時間をかけて思索を深めることが大切だ。
 じっくり味わうなかで国語力が磨かれ、ものの見方も洗練されていく。』

この文章に続く社説の詳細は省略しますが、
日本人の読書量は、小学生は比較的豊富であるものの、
中高生へと年齢が増すにしたがって本を読まなくなり、
1カ月に1冊も読まない高校生は半数前後にも上るといった調査結果もあるそうです。

確かに、自分自身を振り返ってみても、
高校時代は、受験勉強に時間を割かれて、ほとんど本を読むことがありませんでした。
大学生になってようやく、
読書の喜びをほんの少し味わうことができるようになりましたが、
小中学生時代も含めて、それまでにもっと本を読んでおけばよかったと悔やんでいます。

一方、今日(11月1日)の読売新聞の「社説」は、
政府・教育再生実行会議の大学入試改革に関する提言が書かれていました。
どうやら、「筆記試験の点数で合否を判定する従来の入試には、
知識偏重で、受験生の意欲や創造性が評価されていない」との批判があることを受けて、
今回の提言に至ったようです。

一見すると、両社説はつながりのないように思われますが、
変化の激しい現代社会においては、
柔軟な発想力や問題解決能力を備えた人材の育成が大学に求められており、
「情緒や感性を養い、人格を育ててくれる読書」は、
そうした人材の育成に、極めて大きな役割を果たしてくれるような気がします。

前述の産経新聞「主張」は、
『要はまず、「一冊」を手にとることである。』と結んでいます。
私も全くそのとおりだと思います。
若い方には、よき一冊との出会いをお祈りします。