『ポピュリズムとは何か』(水島治郎著:中公新書)を読了しました。
『ポピュリズムは、デモクラシーの後を影のようについてくる』
『ポピュリズムは、「ディナー・パーティーの泥酔客」のような存在』
この二つは、いずれも本書のなかに書かれている文章です。
私はこれまで、「ポピュリズム」という言葉の響きに、
あまり良いイメージを持っていませんでしたが、
本書を読んで、その認識が大きく変わることになりました。
いろいろと勉強になる記述がありましたが、私が特に印象に残っているのは、
「リベラル・デモクラシーがはらむ矛盾」という内容の次のような記述でした。
『現代のポピュリズムは、「リベラル」や「デモクラシー」といった
現代デモクラシーの基本的な価値を承認し、
むしろそれを援用して排除の論理を正当化する、という論法をとる。
すなわち、政教分離や男女平等、個人の自立といった、
「男女平等を認めないイスラム」「個人の自由を認めないイスラム」を批判する。
そしてエリート支配への批判、民衆の直接参加といった
既成政治の打破を訴えるのである。
そうだとすれば、現代デモクラシーが依拠してきた、
「リベラル」かつ「デモクラシー」の論理をもって
ポピュリズムに対抗することは、実はきわめて困難な作業ではないか。
「リベラル」や「デモクラシー」の論理を突きつめれば突きつめるほど、
「政教分離」「男女平等」に基づき反イスラムを訴えるポピュリズム、
少数派排除やEU脱退を決しようとするポピュリズムの主張を、
正当化することになるからである。』
このような矛盾をはらむポピュリズムは、
デモクラシーにおける「改革」と「再活性化」に、
今後、良い影響を及ぼすことは、果たしてできるのでしょうか…?
フランス大統領選をはじめとする、世界政治の行く末を
注意深く見守っていく必要がありそうです。
ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書)
- 作者: 水島治郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/12/19
- メディア: 新書
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