今日7日の朝日新聞デジタル版「異論のススメ」に、
佐伯啓思・京都大学名誉教授が、『加速するAI技術 迫られる「人間とは何か」』
というタイトルの論評を 寄稿されていました。
佐伯先生は、「今日の科学・技術の展開は、
イノベーションの速度の高度化というだけではなく、
何か、根本的に新たな段階に突入しようとしているのではなかろうか。」
と述べられるととともに、多くの技術者やエコノミストが持つ、
次の①から③のようなな考えに対して、以下のようなお考えを披歴されていました。
①おそらくは、科学や技術の本質は何も変わらない。
②あくまで主体は人間自身にあって、AIであれ、ロボットであれ、
生命科学であれ、遺伝子技術であれ、それを使うのはわれわれだ。
③ われわれが理性的にそれを使えば、それは、従来の技術同様、
人間に大きな可能性と幸福をもたらす。
『私は、これらの最新技術の可能性を否定する気は毛頭ないが、
それでも、この新技術から超然として「人間」というものがありえるとは思えない。
ただ便利にそれらを使えばよい、というものではないと思う。
第一の理由は、人間は、確かに新たな技術を有効利用するが、
また同時に他方では、「悪魔と取引する」ものだからである。
物理学の発展が生み出した核融合技術をみればこれは明らかであろう。
第二の理由は、もしもこれらの技術が高度に展開すれば、
人間自身が、これらの技術に取り込まれてゆくだろうと想像されるからである。
こうした先端技術は、こちらに人間という確たる「主体」があって、
それが「客体」としての対象に働きかけるという
近代の合理的科学の前提を 大きく逸脱してしまった。
ここでわれわれは、いやおうもなく「人間とは何か」
という根源的な問いの前に 立たされることになろう。』
う~む、なるほど……。
どうやら佐伯先生の「近代社会の“進歩の思想”は崩壊する」というお考えは、
「インターネットがもたらすカルチャーは、
人間の本性すら大きく変えてしまうかもしれない」とする
鈴木幸一・IIJ会長のお考えに近いような、私はそんな気がしています。
この先、人類はAIと共存していくことができるのでしょうか?
私は、「イノベーションが幸福をもたらすものである」ことを
最後まで信じていたいです……。