今日26日の日経新聞「オピニオン」欄の「時論」に、「失望が生むポピュリズム」と題する、
歴史作家・塩野七生さんへのインタビュー記事が掲載されていました。
そのなかでも、特に印象に残った3つの質疑応答を、
次のとおりこの日記に書き残しておこうと思います。
Q 「ギリシア人の物語」を読むと、国家にとって政治体制と指導者がいかに大切かが分かります。
A 歴史を見てみると、魚は頭から腐る。頭は一番重要で、それが政治。
民衆は相当、最後に至るまで健全なんですよ。しかし政治が最初に腐ると、
民衆がいかに一生懸命にやっていても国力がどんどん下がってくる。
だから政治が機能してくれなきゃ困るんです。
Q 民主政の都市国家アテネは強大なペルシャ帝国に2度勝ちますが、
安定は長続きしませんでした。
A 私は民主政自体はやっぱり最良の制度だと思ってます。
民主政下で初めて自由が花開くからです。自由とは基本的には思考の自由で、
イノベーション(技術革新)につながるわけですね。
今までにない新しい考え、戦略、戦術が生まれる可能性がずっと高い。
ただし民主政は投票に全てがかかります。
投票した人間はやはり「機能してくれ」って期待しているわけですね。
だから機能しないと失望し、失望した揚げ句がポピュリズムです。
金貨の裏表みたいで「うまく使うとこちら側になるが、そうでないと裏が出る」
というようなものです。
Q 10月の衆院選で自民党は連勝し、安倍政権は6年目に入ります。
A まあ10年は必要です。英国ではサッチャーさんが10年あまり。ブレアさんも10年間。
だから小泉純一郎さんが首相を辞める時に辞めるなと言ったんです。
彼は改革で「ルビコン川を渡った」と言いましたが、
渡ったのなら後に誰が来ようとも変えられないところまで突っ走らないといけない。
彼は「疲れた」とか言っていたけど。国民は強大な権力を首相に委託しているわけで、
権力を与えられた人間に花道なんてものはない。政治家ってのは使い捨てにされる。
だからこそ主権在民なんだと。日本は政治家を使わないで捨てることばかり考えている。
まず使う。委託したんですから倒れるまで使えばいい。
う~む、なるほど‥‥。
「リーダーと民主政」についての、含蓄に富むお言葉だと思います。
インタビュアーの坂本英二編集委員が解説されているように、
「民主政という金貨の裏にあるポピュリズムやデマゴーグといった負の側面を抑えるには、
歴史に謙虚に学ぶ必要がある」ことを学ぶことができました。
ところで、塩野七生さんといえば、『ローマ人の物語』があります。
私は、この長編小説を少しずつ読み進めていたのですが、途中で挫折してしまいました。
そして、そうこうしているうちに、今度は『ギリシア人の物語』が登場しました。
この二つの物語は、仕事を完全にリタイアしてから読破に挑戦したいと思います。