今日4日の日経新聞読書欄「半歩遅れの読書術」で、経営学者の楠木建さんが、
松下幸之助著『道をひらく』(PHP研究所)を、「自らの拠って立つ思想と哲学が
実に平易な言葉で書かれていて、今もなお読み継がれている名著」だと紹介されていました。
一方で、岩瀬達哉著『血族の王~松下幸之助とナショナルの世紀』(新潮文庫)では、
「むき出しの利益への執念」「妾宅との二重生活」「袂を分かち三洋電機を創業した井植歳男との確執」
「成功体験にとらわれ迷走する晩年期」など、
ひたすらに血族経営に執着する「人間・幸之助」の姿が書かれていることも紹介されていました。
そのうえで、楠木さんは、次のように述べられていました。
『「これまで見た中で首尾一貫した人は誰一人としていなかった」
‥‥サマセット・モームの結論である(『サミング・アップ』岩波文庫)。
一人の人間の中に矛盾する面が矛盾なく同居している。そこに人間の面白さと人間理解の醍醐味がある。
『血族の王』を読んだ後で、『道をひらく』を再読する。いよいよ味わい深い。ますます迫力がある。
「素直さは人を強く正しく聡明にする」‥‥幸之助は自らの矛盾と格闘し、
念じるような気合を入れて自分の言葉を文章にしたのだと思う。
彼の言葉は「理想」ではなく、文字通りの「理念」だった。
だからこそ、『道をひらく』は人々の道標になり得たのである。』
人間ゆえの限界を差し引いても、なお日本最高にして最強の経営者。幸之助への尊敬がつのる。』
う~む、なるほど‥‥。松下幸之助さんの言葉は、「理想」ではなく「理念」ですか‥‥。
このコラムを読んで、書棚に眠っていた昭和55年8月発行の『道をひらく』を取り出してみました。
久しぶりにページをめくってみると、所々に黄色い線が引いてあります。
その一つが「素直に生きる」で、そこには次のようなことが書かれていました。
『素直さは人を強く正しく聡明にする。逆境に素直に生き抜いてきた人、順境に素直に伸びてきた人、
その道程は異なっても、同じ強さと正しさと聡明さを持つ。
おたがいに、とらわれることなく、素直にその境涯に生きてゆきたいものである。』
コラムを読んだ後だけに、言葉が素直に心に響きます‥‥。

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