今日の日経新聞「経済教室」に掲載された、猪木武徳・大阪大学名誉教授の執筆による、
「相互理解・連携の衰弱一段と~アフターコロナを探る』という論考が勉強になりました。
『‥‥われわれには正確かつ厳密には知り得ないことがある、
という当たり前の事実への気づきも重要だと痛感する。
自然科学には「月と雲の時代」というたとえがあるそうだ。
月には解析性があり、現在の位置と運動法則を把握すれば、すべてが予測できる。
ところが雲には解析性がない。
意外性に満ちており、2~3時間後のことさえ予想するのが難しい。
この2つのタイプの対象の研究が調和を保ちつつ共存するのが「月と雲の時代」の意味だという。
今回のパンデミックは、人間が雲のような世界に生きているという事実を改めて教えてくれた。
人工知能(AI)やビッグデータをめぐる専門家たちの研究競争は、
雲の世界にも一定の解析性をもたらしてくれるかもしれない。
しかし雲の世界がなくなるわけではない。
科学が人間の存在の神秘そのものを解き明かしてくれることはないのだ。
新型コロナ後の世界を予想し、それに備えるという受け身の対応だけでは、流れに身を任すことになる。
筆者自身、むしろこの災禍を奇貨として、流れに抗しつつ、
将来への善き転換へのヒントを自律的に探りたい気持ちだ。
「元の状態が良かった」という思い込みから自由になり、
物事の価値を問い直すという姿勢が必要だと感じるからだ。』
この論考の中で、私が感じ入ったのは、
『「元の状態が良かった」という思い込みから自由になり、
物事の価値を問い直すという姿勢が必要だ』という言葉でした。
猪木教授ご指摘のように、コロナ以前の世界にもう戻ることができないのなら、
気持ちを切り替えて前に向かって進むしかありません‥‥。