今週の日経新聞「経済教室」では、
第1次大戦の教訓について、専門家お二人の論考を掲載していました。
記事によると、第1次世界大戦開戦の100周年を契機として世界規模で歴史を見直し、
その教訓を学ぼうという試みが活発に進められているそうです。
お二人の論考で気になった個所を、いつものように書き残しておきます。
まずは、ローレンス・フリードマン・ロンドン大学キングズ・カレッジ副学長の
論考における「サラミ戦術」という言葉です。
『〜(略)〜 危険なのは、ある特定の領土について
自国の権益を主張する小規模な行動で相手を挑発するだけなら、
大規模な武力衝突は回避できるという思い込みである。これはサラミ戦術と呼ばれる。
サラミ一切れなら争う価値はないと見せかけ、
最後にはまるごと一本とってしまう戦法だ。
サラミ戦術の危険性は、最初の行動よりも、それに対する行動にあると言えよう。
相手国があえて反撃に出れば、対立は激化しかねない。
どちらの側も、最終局面の主導権を握らせまいとけん制し合うが、
次第にどちらも抑制的な対応ができなくなっていく。』
次に、石津朋之・防衛研究所国際紛争史研究室長の論考における
「戦争の原因をめぐる三要素」という言葉です。
『〜(略)〜 この大戦の原因を考える上でさらに有用な概念は、
古代ギリシャの歴史家トゥキュディデスが提示した
戦争の原因をめぐる「三要素」のように思われる。
「三要素」とは、戦争の原因を「利益」「恐怖」「名誉」に求める見方である。』
石津教授の論考を読んで、
近年、第1次大戦前夜の国際政治、とりわけ英独間の緊張関係が、
今日の米中関係に類似しているとの認識が広がっていて、
多くの比較研究がなされていることを知りました。
「歴史は繰り返す」という言葉があるように、
いつの時代も人間の本質には変わりがないので、
過去にあったことは同じ経過をたどって再び繰り返されるかもしれません。
今日の国際情勢を理解するためには、
第1次大戦の歴史に向き合う必要があることが理解できたと思います。