しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

どちらを向いたらいいのか

今日の日経新聞一面コラム「春秋」は、石川啄木を題材にした次のようなコラムでした。


石川啄木が故郷の岩手山を詠んだという。

 「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」。

 この夏、帰省して肉親や旧友らとの再会を待ちのぞんでいた方も多いであろう。

 ところが、新型コロナの影響で、例年とは様相が一変してしまった。

・地元での感染の広がりを恐れ、各地の知事から里帰りへの注文が相次いでいる。

 「家族で十分に相談を」「リモートで」などなど。

 国はといえば、コロナ対策を担当する大臣が「慎重に考えて」と知事寄りのもの言いの一方で、

 官房長官は旅行・観光業界への配慮からか、人の移動の自粛には慎重なのだと伝えられている。

・いったい、どっちを向いたらいいのか。

 自身や子どもの元気な姿を親に見せたい気持ちは強いが、

 地域のお年寄りや医療機関に迷惑をかけたくはない‥‥。

 親族らとの会食などで「密」になりがちなことを考えれば、

 今回は控えめな行動を選んだ方が良いのかもしれない。

 「うちは大丈夫」といった妙な自信は禁物だろう。

・「ふるさとの土をわが踏めば 何がなしに足軽(かろ)くなり 心重(おも)れり」。

 啄木はさまざまな事情から、郷里への思いは複雑だったようだ。

 今夏もコロナの拡大する中で帰省して「心重れり」となっては切ない。

 懐かしの山や海と向き合い「言ふことなし」「ありがたきかな」と

 腹の底から声を上げるため、もう少し辛抱したい。


はぃ‥、我が家では、毎年お盆に、関西圏から帰省する甥っ子家族らを交えて、

賑やかなひと時を過ごすのが慣例となっています。

ところが、今年は複雑な思いです。

久しぶりに会って、皆で楽しく会話したい気持ちはあるけれど、

92歳の父が万が一コロナウイルスに感染したら、取り返しがつかないことになるし‥‥。


コラムを読むと、コラムニスト氏は、広域的な人の移動には慎重な立場だと拝察する一方、

同じ日経新聞には、「Go To キャンペーン」の全面広告が、3面も掲載されていました。

いったいどちらを向いたらいいのか。

多くの国民が、そのように思っているのではないのかしら‥‥?


追記

コラムを読んで、久しぶりに「啄木歌集」(久保田正文編:角川文庫)を紐解いてみました。

コラムで紹介された歌のほかに、私のお気に入りの歌は、

「別れ来て 年を重ねて年ごとに 戀(こい)しくなれる 君にしあるかな」‥‥。

「忘れがたき人」は、そう、それはまるで「ふるさと」のような存在です。