しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

貴重な敗者の記録

町立図書館で借りてきた『WHAT HAPPENED 何が起きたのか?』

(ヒラリー・ロダム・クリントン著、髙山祥子訳:光文社)を読了しました。

本書は、2016年の米国大統領選挙において、民主党の大統領候補となった著者が、

「何を考え、何を感じていたか」について、その体験を丁寧に書き綴ったものです。


常人にはその言動が理解しがたいトランプという人物に、米国国民はなぜ投票したかについて、

結論のようなことが、次のように述べられています。


『トランプに投票した者の話を聞くと、様々な不安や憎しみが、全部繋がっていることが見えてくる。

 中西部での、大学を卒業していない白人男性が中流階級の生活を送ることのできないような

 製造業の仕事の減少、伝統的な性差による役割分担の崩壊、「割りこんで」きて分け前以上を

 持ち去っていく移民や少数派への怒り、別種の世界的価値観を持つ文化との不具合、

 イスラム教徒やテロへの不安、物事がうまく運ばず、前世代のほうが生活が容易だったという漠とした不満。

 人々の生活や価値観において、経済、人種、性差、階級

 そして文化についての不安は全て混ざり合っている。』


そして、選挙戦に敗北した著者は、アメリカで何よりも必要とされているものは、

「根本的な共感」と呼ぶべきもの‥。2016年から何かを学ぶとしたら、

わたしたちは、共通の慈悲の感覚を取り戻さなければならない、と述べられていました。


本書で印象深かったのは、「章」のはじめや終わりなどに引用されていた

著名人の例えば次のような名言・箴言でした。これらが本書の価値を高めているように思いました。


・時間は人生の貨幣だ。あなたが使いなさい。他人に使わせてはいけない。

 カール・サンドバーク(米国の詩人、作家、編集者)


・慰めるという行為は痛みを取り去るのではなく、その場で、「一人じゃない、わたしがいる。

 いっしょに負担を分け合おう。心配しないで、わたしがいる。」と言うことだ。

 わたしたちはそれを受けると同時に、与える必要もある。

 ヘンリ・ナウエン(オランダ出身のカトリック司祭)


・牛のように重たい荷物に自らを繋ぎ、水牛のように忍耐強く引き、物事を前に進めようとして

 泥や糞尿の中で格闘し、繰り返し何度でも、やるべきことをやる人々を、私は愛する。

 マージ・ピアシー(米国の作家、詩人、フェミニスト


・健康な子ども、小さな庭、あるいは改善された社会状況によって、ほんの少しでも世界を良くして去ること。

 あなたが生きたおかげで、一人でも呼吸が楽になった者がいると知ること。それが成功したということだ。

 ラルフ・ウォルト・エマーソンの言葉とされる(米国の思想家、哲学者、作家、詩人、エッセイスト)


・自分自身を知るためには、何よりも、何が欠けているかを知ることだ。

 それは自分自身が、真実に鑑みて評価することだ。その逆はない。

 フラネリー・オコナー(米国の作家)


・あまりにも長い犠牲は、心を石に変える。

 ウイリアム・バトラー・イェイツ(アイルランドの詩人、作家)


・何を試みて失敗したかでなく、今後何ができるかということを心配しなさい。

 ヨハネ23世(ローマ教皇


「歴史とは勝者の記録」だとよく言われますが、

本書は、あともう少しで「ガラスの天井」を突き破ることができた、「貴重な敗者の記録」だと思います‥‥。

最後に、著者自身の名言を一つ‥。

『わたしが消えればいいと思っていた人もたくさんいた。だが、わたしはここにいる。

 ビルがよく言うように、わたしたちには明日よりも昨日のほうが多くなった。

 時間を無駄遣いしている余裕はない。

 もっとするべきことがあり、助けるべき人がいて、終わっていない仕事がある。』