「朝鮮民族を読み解く〜北と南に共通するもの」(古田博司著:ちくま学芸文庫)を読了しました。
以前、この日記で「貝と羊の中国人」を紹介しました。
次は、韓国に関する入門書を読むことにしようと、
いろいろな本を探していたところ、最後にこの本にたどり着きました。
著者は、筑波大学大学院教授で東アジア政治思想史を専攻されています。
その他にも、産経新聞「正論」に、韓国や中国に対する鋭い論評を掲載されています。
その手厳しい論評を読んでいただけに、
本書に対しても、そのような先入観を抱いていたのですが、
読後は、それが一掃されたような気がします。
古田教授は、韓国に六年間滞在された経験があり、奥様は在日韓国人二世です。
そのせいか、文章には北朝鮮を含めた朝鮮民族に対して温かい眼差しを感じます。
本書の中には、朝鮮民族を理解するためのキーワードがいくつか出て来ます。
・ウリ(自分たち)とナム(他人)
・小中華思想と事大主義
・恨(ハン)
このキーワードの中でも最も重要なのは恨(ハン)だと私的には思うのですが、
恨(ハン)について古田教授は、次のように解説されています。
『ハンとは朝鮮民族の歴史的個性として非常に特徴的なものであり、
様々な解釈があるが、筆者に言わせればそれは、
「伝統規範からみて責任を他者に押し付けられない状況のもとで、
階級型秩序で下位に置かれた不満の累積とその解消願望」である。』
そして、「ウリ」と「ハン」の関連性について、次のように指摘されています。
『ウリとハンの関わりはかように根深く、
それは李朝時代の約五百年間、近現代の約九十年間を通じて
今日も朝鮮民族の魂の根幹を揺さぶり続けているのである。』
本書を読んで、韓国と北朝鮮に対する見方が、少し変った自分を発見しています。
なお、本書は朝鮮文化入門書と一般的には紹介されていますが、
決して容易に理解できる本ではありません。
秋の夜長に、心して読むべき本だと思います。
朝鮮民族を読み解く―北と南に共通するもの (ちくま学芸文庫)
- 作者: 古田博司
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/03
- メディア: 文庫
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