今月17日(水)の溜池通信「かんべえの不規則発言」は、「為替」に関するものでした。
発言の冒頭、「かんべえ」さんは、次のように指摘されています。
『円安が進んでいることについて、
「輸出企業はいいけど輸入企業は・・・」式の発言をよく聞く。
確かに自動車産業は1円につき××億円儲かるとか、
電力会社は泣いているという事実はある。
ただし日本は既に貿易立国から投資立国に移行しつつあって、貿易収支は赤字で、
所得収支の黒字で経常収支を支えているのだという認識が欠けている気がする。』
詳しい内容は原文を参照いただくとして、
このところの円安に関して、
参議院調査室の作成資料「経済のプリズム」(平成25年4月号)では、
「円安で景気が回復するのか?」という興味深いレポートが公開されています。
レポートでは、円安は景気にとってプラスとの連想がはたらきがちであるが、
むしろ、国民所得の観点からはマイナス要因であり、
エネルギー輸入量が増加し、貿易収支が赤字に転落している現状では、
円安のデメリットの方が大きいといえるのに、
なぜ、多くの人は円安をメリットと感じ、円安を歓迎するのだろうか、
という疑問を投げかけています。
その原因として、レポートは、次の3点を指摘しています。
① 企業業績に現われるまでの時間差の存在
→ 円安になれば輸出企業の売上高が即座に膨らむ一方、
輸入企業ではコストが増えるという形で緩やかに業績に影響する。
このため、円安になった方が景気にとってプラスであるかのようにみえてしまう。
② 円高デメリットは特定企業に集中、円安デメリットは広く薄く負担
→ 円高のデメリットが特定の企業に偏って現れる半面、
円安のデメリットは日本全体で広く薄くカバーすることになるため、
円安になった方が景気にとってプラスであるかのようにみえてしまう。
③ 円高デメリットは転嫁しづらく、円安デメリットの転嫁は容認される
→ 円高時に輸出価格に転嫁しづらい半面、
円安時には国内販売価格への転嫁がある程度は容認されるため、
円安になった方が景気にとってプラスであるかのようにみえてしまう。
どうやら為替も曲者で、一喜一憂してはいけないみたいです。
でも、せっかく「円安は女神」だと思っていたのに、
このレポートを読むと、ちょっと気分が落ち込んでしまいそうです。
「プラスであるかのようにみえてしまう」のが景気には大事なような気がします。