しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

現代の危機の真相

今日は、二十四節気の「立夏」です。

暦どおりに、夏の到来を告げるような暑い一日となりました


さて、『大衆の反逆』(オルテガ・イ・ガセット著、神吉敬三訳:ちくま学芸文書)を読了しました。

ひとえに私の理解不足なのですが、冗長で刺激がなく感じられ、ほぼ退屈しながら読んでいました。

でも、辛抱強く最後まで読み進めてよかったです。

有難いことに、訳者が本書の「あとがき」で、著者の主張の要旨を次のとおり書かれていたからです。


『‥‥ある社会の効果的な生の形式の選択決定はその社会が持っている性格、

 つまりその社会を支配している人間のタイプの性格によって決まるが、

 現代社会を支配しているのは大衆人であり、大衆人とは本来波のままに漂う人間であり、

 生の計画をもたない人間である。その上、19世紀のデモクラシーと科学技術の落とし子である

 現代の大衆人には次のような悪い特徴がある。

 つまり19世紀は大衆人に恐るべき欲求とそれを満足させるためのあらゆる手段を与えたが、

 その結果現代の大衆人は過保護の「お坊ちゃん」と化し、自分をとり巻く高度で豊かな生の環境=文明を、

 あたかもそれが空気のような自然物であるかのように錯覚し、

 文明を生み出しそれを維持している稀有の才能に対する感謝の念を忘れるとともに、

 自分があたかも自足自律的人間であるかのように錯覚し、自分より優れた者の声に耳を貸さない

 不従順で自己閉塞的な人間と化してしまったのである。

 いうなれば、現代の大衆人は文明世界の中に突如おどり出た未開人であり、「野蛮人」なのである。

 これが「大衆の反逆」の本質であり、こうした大衆人が社会的権力の座を占めたところに

 現代の危機の真相がある。』


なお、オルテガは、「生とはこれすべて、自己自身たるための戦いであり、努力である。

わたしがわたしの生を実現する上で直面する障害こそ、まさにわたしの能力を目覚めさせ、

行動を喚起するものなのである。」と書いていました。

はて、オルテガの眼には、今の世界はどう映っているのでしょう‥?

本書が書かれた当時の「現代の危機」は、今も継続しているのでしょうか‥‥?