しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

スズメに大砲?

金融緩和に関連する日記が続いています。

今月16日(火)の日経新聞「経済教室」は、
齊藤誠・一橋大学教授の『「異次元緩和」の評価㊦〜資金実体経済に回らず』でした。

齊藤教授の論評は、
「雀(スズメ)を撃つのに大砲を用いてはいけない」という
比例原則を説明する格言で始まります。
(こういう書き出しから始まると、読者は記事の内容に興味が湧いてきます。)

齊藤教授によると、
比例原則では、政策目標達成の必要度に比べて
手段の度合いが妥当であることが求められるそうですが、
日本経済は、物価下落が継続するという意味での長期的なデフレ状態にあったわけでなく、
物価下落という意味でのデフレの程度が「スズメ」であり、
日銀の「次元の異なる金融緩和」が「照準の合っていない大砲」であると言われます。

そして、日本経済を覆ってきた“デフレ感”は、物価下落という金融現象が原因でなく、
輸出競争の激化と資源価格の高騰という
国際環境の厳しさに起因する受取所得の減少が主たる背景であり、
物価下落は「物価安定」といった方がふさわしいほど軽微(スズメ)だったにもかかわらず、
金融政策が克服すべき対象として
「15年以上にわたる深刻な物価下落」(羆=ヒグマ)にすり替えられたとされます。

えっ!「スズメ」が「ヒグマ」にすり替えられたのですか?
分かりやすい例え話にしても、こうした指摘にはびっくりしてしまいます。

論評の次の展開は、
「ヒグマ」退治と称して大仰に据え付けられた「大砲」は、
物価上昇に照準が合っているのだろうかという問い掛けです。
その「答え」は、次のようなものでした。

『〜(略)〜こうした資金循環では、
 家計や企業が民間銀行に預けた資金が日銀の当座預金に再び預けられ、
 その資金が日銀による(超)長期国債買い入れを支えている。
 要するに「家計・企業→民間銀行→日銀」と資金が一方通行で流れているだけで、
 資金が経済全体に行き渡り、経済活動を刺激するわけではない。
 もちろん、物価水準への波及効果も期待できない。
 大仰に据え付けられた「大砲」は、物価上昇に照準が合っていないのである。』

う〜ん、参りました。
今回の日銀の異次元緩和に対して、
「無節操な金融緩和に安易な課題解決を求めた代償は大きい」
とまで言わしめる痛烈な批判を見たことも聞いたこともありませんでした。
(でも、私のような読者には分かりやすく、説得力がありました。)

しかし、よくよく考えてみると、
「スズメ」のごとく小さかった物価下落の程度に、
これまで「小銃」で何度となく挑んできたにもかかわらず、
その小さな「スズメ」さえも撃ち落とすことはできませんでした。
だからこそ、黒田日銀は、「小銃」の「逐次投入」を避けて、
「大砲」を撃ったのではないのでしょうか?

物価下落の正体は、「スズメ」だったのか「ヒグマ」だったのか、
「ヒグマ」退治の「大砲」は、物価上昇に照準が合っているのかいないのか。
いずれ「答え」が明らかになるのでしょう。

読者の一人としては、難しい経済理論や経済現象などを
分かりやすく噛み砕いて解説してくれる「経済教室」であることを期待しています。