『貿易赤字論議めぐる2つの誤り』と題する論評を、
竹中平蔵・慶応大学教授が、今月22日の産経新聞「正論」に投稿されていました。
竹中教授は、円安にもかかわらず輸出が伸びず貿易赤字が拡大しているのは、
原発停止に伴う化石燃料の輸入増大が主要因(だから原発の再稼働を)との
もっともらしい論調が強まっているけれども、
この議論には2つの誤りと1つの重要な示唆が含まれると指摘されています。
第1の誤りは、貿易赤字自体を罪悪視する、「貿易赤字で大変だ」といった議論
→ 「赤字が悪くて黒字が好ましい」という発想は、重商主義の誤った発想に他ならず、
過去の実証分析でも、貿易赤字で成長率が低下するとか
金利が上昇するといった傾向は認められていない。
第2の誤りは、貿易赤字は原発停止−燃料輸入増によるとの見解
→ JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏が提示する分析によると、
過去3年間の貿易収支悪化の約3分の1はエネルギー価格上昇と円安が理由であり、
エネルギーの輸入増ではなく、価格要因(円安と国際価格の上昇)である。
残りの大半は対アジア貿易収支の悪化、アジアからの輸入増(機械など)で説明可能。
明らかに製造業が過去数年で生産拠点をアジアに移した結果だ。
こうした2つの誤りを指摘されたうえで、竹中教授は、
日本は景気回復で消費が拡大したが、国内製造能力の海外移転で輸出は増えず、
逆に輸入が拡大するという構造的変化が起きており、
そこには、日本での企業立地環境の悪化問題の存在という
重要な示唆があると述べられています。
そして、海外に移転した企業を国内に引き戻す政策、新しい産業を創る政策、
海外企業誘致を促進する政策が求められていると指摘されています。
竹中教授らしく、とても分かりやすい説明でした。
論評の最後では、企業立地環境悪化の解決には、
『「成長戦略の王道を貫く必要があり、特に法人税大幅減税のような
「非連続型」「ショック療法的」大改革が求められる。』と述べられていますが、
・オールジャパンで通用するのか
・人口減や高齢化が進む地方で、この解決策が有効なのか
・ますます地方が取り残されていくのではないか
などなど、私としては半信半疑の気持ちです。