今月9日の日経新聞「経済教室」は、
浜田宏一・エール大名誉教授の
『プラザ合意30年㊤~金融政策の失敗、傷口拡大』でした。
この論考で浜田教授は、「大胆に言えば、米国主導のプラザ合意は、
日本を高度成長国の座から降ろす時期を速めた」と述べられています。
このことを時系列で説明されていましたが、
私なりに整理すると次のようになります。
プラザ合意後の協調介入→円高進行→ルーブル合意(ドル高阻止)
→ドル安期待に歯止めかからず→日本経済の収縮効果→財政拡張・金融緩和
→株式、土地バブルの到来→日銀金融引き締め→金融引き締め基調の長期継続
→日本経済のデフレ体質の始まり
次に、浜田教授は、「変動相場制が採用されてすでに久しいが、
政治家、政策当局者、メディア、
そして学者の間にさえ国際金融論の基礎的理解が十分でなく、
妥当な政策の採用を妨げているように思う。」と述べられたうえで、
その具体例を次のように説明されています。
・為替レートは基本的に関係国の貨幣供給量で決まる。
しかし、通貨協調が為替レートを安定させられなかったのは、
賃金価格に硬直性のある現実では、
予想されない貨幣政策の変更は為替レートを
オーバーシュート(行き過ぎ)させることが多いためだ。
これが、プラザ合意やルーブル合意以後、
為替レートが漂流してしまった理由。
・変動制下では、国内のマクロ目標を
追求する独立した金融政策が最も世界にとって望ましい。
各国が国内の雇用や物価を目標にするならば通貨戦争は起きない。
各国がそれぞれ為替レートを目標にして介入を実施すると、
それこそ悪い通貨戦争をもたらす。
・為替介入に伴う市場への供給資金を吸収する「不胎化した為替介入」は
ほとんど効かない。
最後に、浜田教授は、最近の「人民元の現状に関する議論」も
以上のような観点からみると理解しやすく、
各国は中国の実質的な景気停滞の効果から逃れるわけにはいかないが、
人民元引き下げ政策からくる金融的なマイナスの影響は
自国の金融緩和で中和できるという持論を展開されていました。
これって「マネタリスト」の考え方でしたっけ…?
文章にすると簡単・明解そうに聞こえるけど、本当にそうなのかしら…?
「言うは易く行うは難し」のような気もします。