しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

目から鱗のお話

今日は朝から、まるで吹雪のような天気でした。
瀬戸内海の温暖な平地では、普段は見ることのない光景でした。
とにかく寒かったです。

さて、ちょっとしたきっかけで、会計検査院のHPに、
吉川洋東京大学教授が「日本経済の現状と課題」というテーマで講演された、
その講義録が掲載されていることを発見しました。

吉川教授といえば、今月7日のこの日記にも書いたとおり、
エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10』の第1位に、
デフレーション」という本が選ばれていたことは、ご案内のとおりです。
ちょうど購入して読んでみようかなと思っていた矢先に、
この講義録を発見できたことは、とても幸運でした。

講義録を読んで、重要だと思われる個所を、
いつものように、この日記をメモ代わりにして残しておこうと思います。
たぶん本には、このようなことが書かれているのでしょうね。

・日本経済については、何と言っても
 輸出頼みの経済なのだという見方をしている人もかなりいるが、
 日本経済はいつでも輸出主導ということではなかった。
 輸出主導というのは日本経済の運命というほどでもないことを指摘したい。

・高度成長期は、少し前の中国のように、日本は年々10%を超える経済成長をしていた。
 その10%を超える成長のうち6割、6%以上は民間の消費が生み出していた。
 それに設備投資が加わって、基本的には10%の経済成長というのは
 内需主導、国内の需要主導で生み出されていた。

・金融の緩和というのは、日本銀行があたかも輪転機を速く回して、
 日銀券一万円札をたくさん刷って世の中に景気よくぱっと出すこと、
 これが金融緩和なんじゃないかと思っている人が多い。
 結論からいうと、日銀券一万円札、千円札の世の中で流通している量、
 つまりお札というのは、金融政策と全く関係がない。接点はゼロである。

・その日銀券と全く関係ない金融政策というのはいったい何なのだ。
 これは極めて地味な、我々普通の人間には直接的には目にできないようなアクション。
 それはどういうことかと言うと、金融機関の場合、市中の民間金融機関が持っている資産、
 具体的には、典型的には国債だが、それを日本銀行が購入する。

・日本でデフレが止まらない。そのデフレが止まらない理由は何か。
 これもまた経済学者、エコノミストの間で百家争鳴だが、
 私の考えは、なぜ日本だけデフレなのかという問いに対するとりあえずの回答は、
 日本だけ名目賃金が下がるような状況が
 続いているというところにあるのではないかと考えている。

・日本では1998 年頃から、
 先進国の中ではやや異例の姿で賃金の下落傾向というのが生まれた。
 賃金が下がりにくいということは、それがデフレストッパーになっていた。
 少なくとも第二次世界大戦以降、
 多くの国では賃金が下がらないということがデフレストッパーになっていたわけだが、
 分かりやすく言えば、日本だけそのデフレストッパーが外れてしまったというところに
 原因があるのではないかと考えている。

・為替レートというのは価格である。
 誰か独裁者が決める、強い国が勝手に決めるというほど単純なものではない。
 価格である為替レートは基本的に市場で決まる。

・円高円安というのは、 何か均衡の取れた釣合いのレートから見て
 どれくらいずれているかということがポイントなのであって、
 その均衡ある釣合いの取れたレートがどれくらいかということを明確にしないと、
 「過大な」円高円安というようなことは議論にならない。

・日本経済の将来というと、何と言っても人口減少。
 人口減少は大変な問題。それはそのとおりだが、
 人口が減少していくから経済成長はできないはずだという理屈は実は単純に過ぎる。
 もうちょっとはっきり言えば、間違っている、というのが私の考えである。

・多くの人が持つイメージは、私なりに想像すると、
 一人一人がシャベルか何かを一本ずつ持って道路工事でもやっているイメージではないか。
 働いている人が100 人だったのが80 人になる。
 そうすれば道路工事でできるアウトプットは減らざるを得ないだろうと。
 しかし、先進国の経済成長というのはそういうものでない。
 一人一人シャベル一本ずつ持って道路工事していたところに
 ブルドーザーが出てくるということなのだ。クレーンが出てくる。
 それが先進国の経済成長というものであるわけだ。
 繰り返しになるが、先進国の経済成長というのは、
 一人当たりの所得が上昇することによって伸びてきたということである。
 それを生み出すものは何か。一方で資本蓄積もあるが、もう一つがイノベーションである。

ちょっと残しておく箇所が多かったかも…?
でも、デフレの主たる要因が名目賃金の低下にあることなど、
「目から鱗が落ちる」ようなお話が盛りだくさんでした。
やっぱり、吉川教授の本は、購入して読まなければいけないような気がしてきました。

デフレーション―“日本の慢性病

デフレーション―“日本の慢性病"の全貌を解明する