しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

この国の「中枢」

財務省と政治~「最強官庁」の虚像と実像』

(清水真人著:中公新書)を読了しました。とても内容の濃い本でした。

 

私はこれまで、著者の作品である

『官邸主導~小泉純一郎の革命』(日本経済新聞社)

『経済財政戦記~官邸主導 小泉から安倍へ』(日本経済新聞社)

『首相の蹉跌~ポスト小泉 権力の黄昏』(日本経済新聞社)

『消費税~政と官との「十年戦争」』(新潮社)を読んできましたが、

今回の本は、これらの要約版のような感じで、復習にもなりました。

とにかく、著者の作品はいずれも力作で、「ハズレ」というものがありません。

 

「最強官庁」といわれる財務省…。

その「本質」は、本のなかで語られている、

ある大学教授の次の一言に表れていると思います。

 

『財政でも税制でも世の中の大半から嫌われる厳しい主張を展開する。

 政治家に水面下で根回しし、見据えた着地点へ誘導して行く。

 結果として泥をかぶる。それが財務官僚の仕事ではないのか。』

 

さて、この本では、一人の政治家と一人の財務官僚が印象に残りました。

一人の政治家とは、与謝野馨さん。

自民党では財政規律派の旗頭であった人が、

民主党菅内閣では、「変節」批判覚悟で、

消費税増税へのシナリオを描くため、経済財政相として入閣しました。

 

一人の財務官僚とは、消費税10%に執念を燃やした香川俊介さん。

がん闘病を経て財務事務次官になった香川俊介さんは、

体調を崩しながらも松葉杖や車いすに頼って、

財務事務次官という激務を一年間務めあげたそうです。

消費税増税という政策の是非はともかく、お二人の、その志の高さに敬服します。

 

財務省が本当に「最強官庁」であるならば、

これほどまでに国家財政は赤字を拡大しなかったはずなのですが、

それよりも、時の政治に翻弄されつつも、

その局面局面で政策を遂行することができる、優秀な人材の豊富さが、

財務省の強みではないかと私は思います。

 

同時に、人口減少時代に突入した日本は、

すべての国民の知恵を総動員して難局を乗り切る必要があり、

財務省は政治家だけではなく、国民の声にも謙虚に耳を傾けてほしいと思います。

 

財務省と政治 - 「最強官庁」の虚像と実像 (中公新書 2338)