日経新聞に連載中だった
洋画家・絹谷幸二さんの「私の履歴書」は、今日30日が最終回でした。
その最終回のタイトルは、
『芸術と人生~美しいものは命を守る 絵空事の力信じ、これからも』。
タイトルにふさわしく、洋画家としての人生訓にあふれた内容でしたが、
とりわけ印象に残ったのは、次の記述でした。
『何千年にわたり国を追われる運命を課せられてきた民族は、
自分たちの財産を貨幣で持ち出すことは困難だ。
だからこそ、彼らはアート・アンド・ミュージックが
自分の身を助けることを知っている。
絵を描けばパンの1切れ、歌や踊りを披露すれば投げ銭を得ることができる。
絵の1枚、彫刻の1つを携え、新天地での生活の基盤を築いた。
芸術は、その日食べなければいけない命を支える
最後のリスク・マネジメントの手段なのである。
欧州で戦後いち早く美術館や劇場が復興したのはそのためだ。』
そういえば、昨日29日に放送されたNHKスペシャル「新・映像の世紀」でも、
第一次世界大戦が終結した1920年代、迫害を逃れてヨーロッパから
繁栄を謳歌するアメリカに移住したユダヤ人が、
西部のハリウッドで映画産業を興したという話が紹介されていました。
まさに「芸は身を助く」ですね…。
一般的な認識としては、
美術展覧会へ足を運ぶことは余暇の一つ、なくて困るものではないけれど、
絹谷さんは、『美しいものとは、何より命をまもってくれるものである』
とおっしゃっています。
芸術の世界には縁がなかった私だけれど、
これから、たまには美術館にも足を運ぼうかな…と思いました。
ひょっとしたら、一枚の絵との出合いが、
その後の人生を変えるかもしれませんから……。(ちょっと大げさでした)