今月28日の日経新聞「経済教室」は、
田近栄治・一橋大学特任教授の
『税制改正 積み残しの課題㊤〜経済の好循環 促す土台に』でした。
「税制改正」と聞いただけで、「複雑怪奇」というイメージが先行し、
普段は避けて通るようなところがありますが、田近教授の論考を読んで、
政府税制調査会において、
働き方の選択に対して中立的な税制を構築する観点から、
「配偶者控除」に関し興味深い議論が交わされたことを知りました。
田近教授によると、配偶者控除のあり方を検討するうち、
問題の核心は若年・低所得者への支援のあり方だとわかってきたそうで、
具体的には次のように述べられています。
『様々な主張は論者の生活のあり方に関わり、
配偶者控除を利用できる人とできない人の間の、
いわば既得権を土俵にした争いとなってしまう。
所得が少なく結婚も子どもを育てることも困難である若年・低所得者を前に、
そうした水掛け論は時代錯誤である。
真の問題は結婚や子育てが可能となる支援をどう行うかでないか。
その一環として税制が役立つことは何か。
政府税調はこうした議論をたどり、
配偶者控除の得失という狭い視点から、所得税を通じた若年・低所得者支援という、
デフレ脱却のための税制改革に舞台を移した。』
中国に抜かれたとはいえ、世界第三位の経済大国である日本で、
子どもの貧困率が高く、結婚ができない若者が多いという現実は、
日本の社会システムそのものにも問題があるのではないかと思いますが、
そうした社会システムのひずみを税制で修正する、
そのような税制改正になることを大いに期待したいと思います。
「成長と格差是正の観点から税制のあるべき姿を考えたい。」
田近教授は、論考の冒頭でこのように述べられていました。
私の「税制」に関する知識は乏しいけれども、
これからは関心を持って議論の行く末を見守っていきたいと思います。