しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「凄惨な現実」を知る

『日本軍兵士~アジア・太平洋戦争の現実』(吉田裕著:中公新書)を読了しました。


著者は、「次の三つの問題意識を重視しながら、凄惨な現実を歴史学の手法で描き出してみたい。」

と述べられていました。

 ・戦後歴史学を問い直すこと

 ・「兵士の目線」で「兵士の立ち位置」から戦場をとらえ直してみること

 ・「帝国陸海軍」の軍事的特性との関連を明らかにすること


まず、本書を読んで驚いたのは、約230万人といわれる日本軍兵士の死は、

実にさまざまな形での無残な死の集積だったという事実です。

具体的には、「戦病死」、「餓死」、「海没死」、「特攻」、「自殺」、「「処置」という名の殺害」‥‥。

著者は、「その一つひとつの死に対するこだわりを失ってしまえば、私たちの認識は

戦場の現実から確実にかけ離れていくことになる。」と述べられていました。


さらに、衝撃的だったのは、日本軍兵士の「心と身体」の問題でした。

具体的には、「結核の蔓延」、「虫歯の蔓延」、「精神神経症の発症」、「覚醒剤ヒロポンの多用」、

「休暇制度の不備」、「被服・装備の劣悪化」‥‥。


そして、日本軍兵士の無残な死の歴史的背景について、著者は次のような点を指摘されていました。

「短期決戦、作戦至上主義」、「極端な精神主義」、「米英軍の過小評価」、「資本主義の後進性」‥‥。


読み進めるにつれ、劣悪な戦時環境で無念の死を遂げられた方々の気持ちを思うと

暗澹たる気持ちになる一方で、祖国のために命を捧げられた方々の尊い犠牲の上に、

今の私たちの平和な社会があるのだという事実を改めて認識した次第です。

アジア・太平洋戦争の現実」を知るうえで、

また、「不戦の誓い」を確認するうえで、本書は必読の一冊だと思います。