「4島一括」から「2島先行」へと日本政府の方針が大きく転換した北方領土問題に関して、
今日の朝日新聞デジタル版「耕論」に、元外務省欧亜局長で京都産業大学教授の東郷和彦さんと、
九州大学・北海道大学教授の岩下明裕さんのお二人が、論評を寄稿されていました。
私は、お二人のうち、岩下教授の次のようなお考えに共感を覚えました。
・2島プラスアルファを求めても相手は乗ってこない。
その現実に突き当たり、日本政府は今、2島をベースにした新しい交渉の入り口にいます。
それが共同宣言に回帰することの意味です。プーチン氏の誘い水に乗った形でしょう。
・プラスアルファを夢見る時代が実質的に終わった。それが会談の意味です。
2島先行でも2島プラスアルファでもない、2島を上限とする交渉の時代です。
なぜならば、スタートラインを2島に設定した交渉の帰結は、それ以下にしかならないからです。
最終的に「1島プラスアルファ」になるのか、あるいはそれ以下になるのか。
誰にも予測できません。
・有効な手を打てなかった一因は、4島にこだわったことです。
国民に受け入れられやすい政策にこだわったツケが今、来ています。
今になって2島に転換するくらいなら、なぜもっと早く転換しなかったのでしょう。
実は日本の世論は、今まで政府が言ってきたほど4島一括にこだわってはいなかったと思います。
2島先行が受け入れられる可能性もあったので、残念でなりません。
・安倍政権がプーチン氏の誘い水に乗ってまで領土問題にこだわっているのは、
平和条約を結びたいと考えているからです。
ロシアと平和条約を結ぶ意味は何なのかを今考えるべきときだと思います。
北方領土を大きく失ってまで条約を結ぶことに果たしてどういう国益があるのか、です。
私は、学校の歴史教科書で、第二次大戦終戦直前に、
ソ連が日ソ中立条約を破って対日参戦したことを学習して以来、今日に至るまで、
ソ連・ロシアという国家に対して、不信感と嫌悪感を抱いてきました。
このソ連・ロシアに対するアレルギー症状は、なかなか治りそうもありません。
ただ、一方で、東郷教授の「これまで日本政府は、目標は4島返還と言い続けてきました。
今回の方針転換を国民に理解してもらうには、これまでの交渉経緯を説明する必要がある。」
というご指摘は、そのとおりだと思うので、私自身も、
参議院調査室や国立国会図書館から発行されている北方領土問題に関する秀逸なレポートを
もう一度読み返してみたいと思っています。