しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

バブル発生と崩壊を学ぶ

長い期間をかけてようやく

『検証バブル失政~エリートたちはなぜ誤ったのか』(軽部謙介著:岩波書店)を読み終えました。

「バブルがなぜ発生したのか、その発生と崩壊をなぜ防げなかったのか」‥‥。

長年、私が疑問に思っていたことについて、本書の「エピローグ」には、その要点が簡潔に書かれていました。


まず、バブル発生の要因については、

・日銀の低金利が長く続いた。物価上昇を加速する税制・規制にバイアスがかかっており、

 東京の一極集中も続いた。金融自由化が進み金融機関による貸し出しが活発化したのにリスク管理が遅れた。

 自己資本比率規制が導入された。日本経済の先行きに強気の期待が強まった。

 国民の間には自信が芽生え、現状へのユーフォリア(陶酔)が生まれた。


次に、バブルの発生と崩壊をなぜ防げなかったのかについては、

・当時の日銀には独立性がなかった、だから利下げを強要された、だから利上げに踏み切れなかった。

 米国の一極主義を押し返せなかった。日本は「したたかな対応」を取れなかった。

 日本の統治機構の問題。具体的には、総量規制にみられたような狭い分野を対象にした「縦割り」の行政。

 近視眼的な課題設定と処理の仕方。それを支える現実主義的・大衆迎合的な政治の流れと世論の圧力。


そして、この「エピローグ」のなかでは、次の記述が強く印象に残っています。

『バブルを振り返って「経済の過熱を抑えるために公定歩合を上げたかったが、

 物価が落ち着いていたのでできなかった」という弁明と、「デフレ脱却が最優先なので、

 いまは出口政策を語るのは時期尚早だ」という主張が相似形にならないという保証はない。』


「バブルは別の顔をしてやってくる」

著者は、エコノミストの熊野英生さんの、この秀逸な表現を引用されていました。

ひょっとしたら、バブルは私たちが気がつかないうちに、すぐそこにやってきているのかもしれません。

結論として、本書は一読の価値のある力作だと思います。