NHKテキストの100分de名著「資本論~カール・マルクス」を読了しました。
テキストの執筆者は、経済思想家で大阪市立大学准教授の斎藤幸平さんです。
いゃあ~、それはもう、実に「知的刺激に溢れる」内容で、価値の転換を迫るような本でした。
学生の頃から聞き慣れた、私にとっての「資本論」は、とても難解な書物で、
なおかつ、「資本論」→「マルクス・エンゲルス」→「共産主義・社会主義」
→「レーニン・スターリン」→「旧ソ連」→「一党独裁」→「個人の自由が制限された社会」
という連想が働き、腫れ物に触るような、そんな存在であったように思います。
ところが、本書を読んで、そんな先入観は、どこかとに飛んでいってしまいました。
著者の斎藤さんは、本書の「はじめに~人新世の危機に甦るマルクス」で、
次のようなことを述べられていました。
『‥‥世界中に豊かさをもたらすことを約束していたはずの資本主義。
ところが、「人新世」は、
むしろ社会の繁栄を脅かすような数多くの危機によって特徴づけられています。
そして、新型コロナウイルスのパンデミックと気候変動の影響による異常気象が、
私たちの文明的生活を脅かすようになっています。』
『‥‥このまま資本主義に人類の未来を委ねておいて、本当に大丈夫なのでしょうか。
様々な問題が、想像を超えるスピードで拡大し、深刻化しているのに、
なぜ資本主義にしがみついて〝経済を回し〟成長し続けなければならないのでしょうか‥‥。
そんな疑問が湧いてくる世界だからこそ、「資本論」が再び必要なのです。
顕在化してきた危機の根本原因は資本主義であり、
だからこそ問題解決のためには、資本主義から脱却する必要がある、と私は考えています。
もちろん、それは「資本論」を読破するよりもずっと難しいことですが、
その一歩に向けた想像力と創造力を与えてくれるのが、マルクスなのです。
だから今、世界では、改めて「資本論」が論じられるようになっています。』
う~む、なるほど‥‥。
「これからも、これまで通り経済成長と技術革新を続けていけば、
いつかはみんなが豊かになるというトリクル・ダウンの神話は、もはや説得力を失っています。」
という著者の解説は、とても説得力がありました。
「今とは違う豊かな社会を思い描く想像力、構想する力」を持てるように、
私もこれからは心掛けたいと思います‥‥。
NHK 100分 de 名著 カール・マルクス『資本論』 2021年1月 (NHK100分de名著)
- 作者:斎藤 幸平
- 発売日: 2020/12/25
- メディア: ムック