『コロナ危機の政治~安倍政権VS.知事』(竹中治堅著:中公新書)を読了しました。
本書の目的は、「安倍政権と地方公共団体が新型コロナウイルス感染症の拡大によって起きた
危機に対応する政治過程を分析すること」で、その対象とする時期は、
「中国武漢市政府がウイルス性肺炎の患者が発生したことを発表した2019年12月31日から、
菅義偉内閣が成立する2020年9月16日にいたるまでの期間」とされています。
いろいろと勉強になったり、参考になったりする記述があるなかで、
私が最も印象に残ったのは、次のような記述でした。
『‥‥こうした「フラットな関係」(国、都道府県、保健所設置市・特別区の間)が生まれた要因については、
1990年代以降のさまざま制度改革を総覧する待鳥聡史の最近の研究が貴重な知見を与えてくれる。
待鳥氏は政治改革、省庁再編のほか、司法制度改革、地方分権改革などを対象に
改革の背景や帰結について分析している。
重要な議論は次の二点である。
第一に、各改革は個別に行われたため、日本の公共部門のなかで集権化と分権化が同時に進み、
全体として整合性を欠くことになったこと。
第二に、地方分権の結果、国から地方への権限委譲(私は「権限移譲」が正しいと思います)が進み、
地方公共団体の自立性が高まったこと。
1994年の政治改革以降、首相の指導力は高まった。
しかし、分権改革も実施されたために国と地方公共団体の調整は以前より困難になったわけである。
これまで政府内で首相の指導力が強化されていたことを踏まえ、
首相の指導力を制約する要因として国会制度、参議院制度が注目されてきた。
コロナ危機をめぐる政治過程は、地方公共団体が担当する政策分野においては、
特に首相と都道府県知事と意見が異なる場合に、
首相の政策立案は知事の意向によって制約されることを明らかにしている。
さらに首相が都道府県知事の担当する分野において特定の政策の実現を望むのであれば、
知事との調整が必要であることも示している。‥‥』
う~む、なるほど‥‥。
今回のコロナ危機に際して、国と地方公共団体が右往左往している印象を受けるのは、
「集権化と分権化」という、我が国の政治の仕組みが、その原因の一つなのかもしれないのですね‥‥。
‥‥ということは、国家が危機に直面した時の、政治制度はどうあるべきか、
そのグランドデザインを、大局的かつ総合的に描き直す必要があるのかもしれません‥‥。
なお、本書は巻末に、「参考文献」や「関連略月表」などが詳細に整理されていて、とても役に立ちます。
後世に残る貴重な文献の一冊として、本書は数えられると思います。
コロナ危機の政治-安倍政権vs.知事 (中公新書, 2620)
- 作者:竹中 治堅
- 発売日: 2020/11/20
- メディア: 新書