しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「対極をバランスする」という思考法

NHKテキストの100分de名著『論語と算盤~渋沢栄一』を読了しました。

テキストの執筆者は、作家で中国古典研究家の守屋淳さんです。

すでに守屋さん執筆の『現代語訳 論語と算盤』(ちくま新書)を読んでいたので、

復習のような感じですんなりと読むことができました。


テキストのなかで守屋さんは、「論語と算盤」は、対極にある二つの価値観を混ぜ合わせて、

ある意味「不純」にしているからこそ、社会でより多くの人を取りこぼすことなく、

抱え込むことができる、と書かれていました。

渋沢には「対極をバランスする」という思考法があるとのことでした。

それは、中国の伝統的な「陰陽」という思考法に行き当たるそうで、読んでいてとても勉強になりました。


『「対極にあるものを両立させる」という考え方は、

 その淵源をたどると中国の伝統的な思考法に行き当たります。分かりやすいのが、陰陽という考え方。

 陰陽では、世界は陰と陽という対立する要素のバランスによって成り立っていると考えます。

  ~(中略)~

 また、四書五経の一つである「書経」は、優れた指導者の条件として、

 次のような対極的な要素をバランスさせることを挙げています。

 ・寛容でありながら、厳しい一面がある。・柔和でありながら、芯が通っている。

 ・慎重でありながら、ものごとの処理が機敏。・有能でありながら、相手を見下さない。

 ・従順でありながら、意志が強い。・直情でありながら、心は温かい。

 ・大まかでありながら、筋は通す。・決断力に富みながら、思慮深い。

 ・行動力がありながら、善悪のケジメはわきまえている。

 (寛にして栗(りつ)、柔にして立、愿(げん)にして恭、乱にして敬、擾(じょう)にして毅、

 直(ちょく)にして温、簡にして廉(れん)、剛にして塞(さい)、彊(きょう)にして義)』


なお、テキストの最後に守屋さんは、

「渋沢の人生に学び、対極にある価値を両立させる力をつけ、

 社会を俯瞰する視点を持つことで、私たちは社会をより良くしていくことができるかもしれません。」

と述べられていました。

新一万円札を見るたびに、テキストで学んだことを思い起こしたいと思います。