今日の日経新聞オピニオン欄「Deep Insight」、秋田浩之コメンテーター執筆による、
『80年間なぜ変わらない~コロナに苦戦、戦前の教訓』というタイトルの論評が、とても勉強になりました。
記事ではまず、「人口千人当たりの病床数は先進国で最多なのに、日本の医療は逼迫し、
ワクチン接種率でも先進国中、最下位のレベルだ」として、次のように指摘しています。
『コロナが世界を襲ってから約1年間。
このありさまは医療や衛生体制にとどまらず、日本の国家体制に欠点があるということだ。
その欠点とは平時を前提にした体制しかなく、準有事になってもスイッチを切り替えられないことである。
日本という列車は単線であり、複線になっていない。』
そして、戦前・戦中と現状の国家運営には少なくとも3つ、共通の欠点があるとしています。
第1は、戦略の優先順位をはっきりさせず、泥縄式に対応してしまう体質。
日中戦争もそうだったように、いったい何をめざし、ゴールとするのか、
政府の方針は明確でないまま戦いが広がり、国民の支持も十分、得られなかった。
時代背景はちがうが、コロナ対策にも重なる面がある。
感染封じ込め、経済の維持、東京五輪‥‥。
何を最優先するのか不明確なので緊急事態宣言は惰性となり、国民も従わなくなってきている。
優先順位が定まらない一因が、言われて久しい縦割り組織の弊害、これが第2の問題点。
ワクチン接種やPCR検査、コロナ病床の確保が滞る事情はさまざまだが、
元凶のひとつが省庁間や中央と自治体の連携が乏しいこと。
ワクチンでいえば、接種の管轄は厚生労働省、自治体との調整は総務省、輸送は国土交通省。
各省庁に担当がまたがるのは米欧でも同じだろうが、緊急時の調整力が日本は弱い。
今は、医療や防疫の専門家は多いが、全体状況を冷徹に判断し、政策を調整できるリーダーが乏しい。
戦前の体質は変わっていない。
第3の欠点が、「何とかなる」という根拠なき楽観思考。日本はなぜか、最悪の備えに弱い。
戦時中でいえば、勝ち目が薄い戦争を米国に仕掛けておきながら、
明確な終戦シナリオを用意していなかった。
2009年の新型インフルエンザを受け、国の総括会議は翌年、感染大流行にそなえた提言をまとめていた。
保健所やPCR検査、ワクチン開発の強化などが並んだが、たなざらしになった。
そして、この記事の最後では、次のように書かれています。
『真珠湾攻撃から今年で80年。コロナ危機は日本が引きずってきた体制の欠点をあらわにした。
いま改善しなければ、将来、取り返しのつかない深手を負いかねない。』
う~む、なるほど‥‥。
これらは名著「失敗の本質」で、繰り返し述べられていることですよね‥‥。
ところで、個人的なことではありますが、私は「我が家の奥様」から、
さまざまな欠点を日々指摘されているのですが、自分で自分の欠点は分っていても、
なかなか改善することができません。
「日本の国家体制の欠点」というものも、個人の性格と同じで、
埋め込まれたその「DNA」から、なかなか改善できないものなのかもしれません。
追記
記事の次の画像がとても分かりやすかったので、この日記に引用させていただきます。