『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』(高木徹著:講談社文庫)を読了しました。
野村高文さんのポッドキャスト「News Connect(ニュースコネクト)」で、
ゲストの経営共創基盤 共同経営者・塩野誠さんが、
ロシアによるウクライナ侵攻のお話のなかで、この本のことを推薦されていました。
本書では、旧ユーゴスラビアの民族紛争に際し、
アメリカの辣腕PRマンの情報操作によって国際世論をつくり、世界中をセルビア非難に向かわせた内情が、
迫真に迫る文章でもって描かれていて、今のウクライナ危機と重なるものがあります。
「こんな世界があったのか!」と驚嘆する事実とともに、いくつか印象に残る記述がありましたが、
そのうちの一つが、著者の主張ともいえる次の文章でした。
『日本の外交当局のPRセンスはきわめて低いレベルにある。これは構造的な問題である。
アメリカの高級官僚は、民間で活躍してから役所に入る、
あるいは官僚となってからも、いったん外に出て経験を積む人が多い。
彼らの能力はそういう民間の、食うか食われるかの厳しい世界の中で磨かれるのだ。‥‥
‥‥日本のように大学を卒業してすぐに外務省に入り、一生その中で生きていく外交官が大半、
というやり方では永遠に日本の国際的なイメージは高まらないだろう。
昨今、多少の人材を民間から登用することも始められているが、
量的にも質的にも彌縫策(びほうさく)にすぎない。
現在の硬直しきった人事制度を根本から変革しないかぎり、
21世紀の日本の国際的地位が下がる一方になることは、はっきりと予見できる。』
そして、「泣かない赤ちゃんは、ミルクをもらえない」というボスニアのことわざも印象的でした。
国際社会に振り返ってもらうには、大きな声を出さなければならないのですね。
今のウクライナのように‥‥。
世界というか、物事を多角的に見ることの大切さを教えてくれた本でした。