『空白を満たしなさい』(平野啓一郎著:講談社)を読了しました。
3年前に自殺したサラーリマンの主人公が復生するという
俄かに信じがたい場面からストーリーが始まるので、一歩引いた心理状態で読み始めました。
ところが、読み進めていくとこれがなかなか面白くて、一気にテンションが上がっていきました。
本書の中で特に印象に残っているのは、老婆を助けるために燃え盛る家の中に飛び込んで亡くなった
ラデックという人物が語る次のような言葉です。
『‥‥もし、私の愛する人たちが、私の死後、
あれこそがラデックだったと思い返すような一瞬があったとするなら、
私はそれを幸いとしよう、と。私は、彼らがその一事を選んでくれたことを感謝します。
私はそういう人間として、彼らの心の中に残っていくことを喜びます。
それが私の死後の幸福となるでしょう。』
本書の帯紙に書かれていたように、
本書は「生きづらい時代と向き合う、新たな希望の物語」なのかもしれません。
死生観について考えさせられる、とても「味」のある本でした‥‥。