雇用者報酬が増えても、それに伴って個人消費が増えなければ
経済は好循環せず、GDPは停滞してしまいます。
でも、どうして所得が増えても消費拡大に結び付かないのか?
こんな素朴な疑問に、
第一生命経済研究所の熊野英生さんの経済レポートが答えてくれています。
以下、その内容を整理してみました。
・所得増加は着実に進んでいるのに、
2014春から家計貯蓄率が上昇していることがデータから読み取れる。
・今、なぜ、貯蓄率が上昇するかといえば、
目先の物価上昇は、将来の生活コストの増加を直感させるので、
その不安感から現在の貯蓄を増やしていることが考えられる。
・経済学の恒常所得仮説によれば、
家計が一時的な所得増だとみているときには、消費は増やさないとされる。
ならば、家計は、現在の賃上げの機運を一時的なものとみているという
仮説が成り立つ。
・先の恒常所得の考え方に基づくと、所得が増えるとき、
それが非正規雇用の増加によってもたらされた場合、
雇用安定が展望しにくいので、消費を容易には増やさないという見方ができる。
・雇用形態が安定にならないと、所得形成の基盤も安定しない。
う~ん、なるほど……。
要するに、家計の所得増加が恒常的と思うような経済環境が必要なのですね…。
そのうえで熊野さんは、所得増加の裾野を広げるためには、
改めて労働市場改革への取り組みを強化して、
①若者を中心とした正規社員への転換、
②高齢者雇用を非正規に縛り付ける在職老齢年金の見直しを進めること
が肝要だと述べられています。
孟子の言葉に、「恒産なきものは恒心なし」という言葉があります。
「恒心なし」より先に、「消費拡大なし」と言えるのかもしれません。
なんとかならないのでしょうか……?