日経新聞「経済教室」では、今日21日まで、
『あるべき経済対策とはなにか㊤㊥㊦』という論考が掲載されていました。
いつものように、この日記をメモ代わりにして、
それぞれの執筆者の主張の骨子と思われる箇所を残しておきたいと思います。
・人々が消費をする際に頭にあるのは、その時の所得よりも資産額だ。
所得がゼロでも大金持ちは消費をするし、
所得があっても借金を抱えていれば消費は控えられる。
ところが、その資産の拡大すら消費に影響していない。
日本の家計金融資産は順調に増え続け、
3年で約1500兆円から約1700兆円に拡大し、
1人あたりでみると世界でも5本の指に入る。
しかし家計消費額は過去20年横ばいだ。
・お金を配っても景気への効果がないとすれば、どのような政策がよいのか。
それは、一時的ではなく恒常的な雇用をつくることである。
それにより生活に安心感が生まれる。
失業が減るから賃金低下も止まり、デフレ圧力も軽減される。
その結果、買い控えも収まって消費が上向く。
・恒常的に政府が雇用をつくるためには、恒常的な財源が必要になる。
このとき、今以上の国債発行や金融緩和には百害あって一利なしなので、
財源は増税しかない。消費税2%程度でも100万人の雇用創出は可能だ。
さらに、資産がこれだけ増えても景気に影響がないということは、
増税しても景気にマイナスの影響はないことを意味する。
次に、稲田義久・甲南大学副学長です。
・円安・株高の追い風を受け企業収益が高まり、生産、雇用や企業設備を増やしたが、
一方で家計にその成果(トリクルダウン=浸透)が
十分行き渡っていないことは明らかだ。成長戦略が十分な成果を上げていない。
この間、潜在成長率の天井が低下しており、
そのため外的なショックにより日本経済がマイナス成長に陥りやすくなっている。
・民間消費の低迷が低成長の原因ならば、
余剰資金を賃金に振り向けることで家計消費を回復させれば、
景気低迷を脱することが可能となる。要は分配のバランスへの配慮である。
賃上げを通じて民間消費の底を厚くし、一方で賃金上昇がもたらすコスト増は、
生産性拡大につながる投資を促進することで
民間消費と企業設備の需要サイドの好循環が生まれる。
この好循環を回すことに注力すべきだ。
・日本経済にとって長期の課題は人口減への対応だ。
この課題から、健康・医療産業の発展、
振興を徹底する成長戦略がみえてくる。
これにはITの強力な援用と、それに堪えうる人材育成が欠かせない。
最後に、森信茂樹・中央大学教授です。
・最近の消費低迷は、格差拡大による中間層の崩壊という現象などを反映しており、
将来不安を背景とする消費性向の低下が主因といえる。
こうした状況下で、経済対策として一時的な商品券の配布や
年金生活者へのバラマキ給付をしても効果はなく、
税金の無駄遣いというべきだろう。
・政府が担う重要な権能の一つは、税制と社会保障を活用した所得再分配だ。
所得再分配には損得が生じるので、政治家は避けたがる。
だが経済界に設備投資の増額や賃金引き上げを要請するだけでは、
効果も限定的で持続的な経済成長はおぼつかない。
・負担に余裕のある高所得者層(とりわけ富裕高齢層)の負担を引き上げ、
ワーキングプア層を含む中低所得者の税・社会保険料負担を軽減し、
勤労意欲の増大を通じて中間層の底上げを図る政策こそが、
今求められる経済対策だ。
・最後に社会保障財源である消費税率を、
法律通り引き上げて社会保障を充実させる政策が
所得再分配政策として重要なことは言うまでもない。
う~む、どの先生の主張もごもっとものような気がします。
最終結論としては、「あるべき経済対策」を実施するためには財源が必要で、
そのためには増税しかないということなのでしょうか?
ただ、私は、消費税増が社会保障政策の充実に確実につながることが
国民に肌で実感できなければ、将来不安はなかなか解消しないと思います。