しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

不完全な自分に「片目をつぶる」

今月3日の朝日新聞一面コラム「折々のことば」は、ドイツ文学者・丘沢静也さんの

「息苦しい秩序ではなく、呼吸をしている無秩序。それが人間というものだよ。」という言葉で、

いつものように鷲田清一さんの、次のような解説がありました。


『「からだに完全な健康がないように、心にも完全な健康はない」と、ドイツ文学者は言う。

 人間というものは、整った完全な存在ではなく、いつもなにがしかの傷を抱え、ミスもしょっちゅう犯す。

 そうしたブレを「排除すべきブザマなもの」と考えるのではなく、

 それに「片目をつぶる」ところから、ユーモアを孕(はら)んだ余白も生まれてくると。

 「マンネリズムのすすめ」から。』


はぃ‥、不完全な私には、なんだかホッとするような言葉です。

きっと、不完全な自分に「片目をつぶる」のは、本当は「勇気」がいることなのだと思います。


ところで、自民党の総裁選に関して、今日は次のような記事が配信されていました。

菅義偉首相の退陣意向表明を受け、共同通信社が4、5両日に実施した全国緊急電話世論調査で、

 次の首相に「誰がふさわしいか」と聞いたところ、河野太郎行政改革担当相が31.9%でトップだった。

 石破茂元幹事長26.6%、岸田文雄政調会長18.8%が続いた。自民党議員7人を挙げた質問‥‥

 ‥‥次の首相に何を最も望むか尋ねると「国民への説明能力」36.3%、

 「リーダーシップ」28.4%が多かった。‥‥』


正直、私は、河野太郎行政改革担当相の「人となり」がよく分かりません。

そんなに「国民への説明能力」などの資質が高いのでしょうか‥?

個人的には、菅総理を支えてきた閣僚経験者(特に、コロナワクチン担当大臣)は、連帯責任を負うべきで、

今回の総裁選に立候補する資格はないのではないかと思っています。


あぁ‥、今日も過激なことを日記に書いてしまった‥‥。(反省)

危機時におけるリーダーの資質を考える

日差しは強くても、吹く風は次第に肌に優しくなってきました。

厳しい暑さとの闘いも、もうしばらくの辛抱です‥‥。


さて、昨日の菅総理の退陣表面に関連して、

今日の日経新聞「社説」と愛媛新聞「社説」には、それぞれ次のようなことが書かれていました。


『‥‥危機にあって、指導者に求められる重要な資質のひとつが国民とのコミュニケーション能力だ。

 とりわけ、他国が採用するロックダウン(都市封鎖)のような強力な手法をとらない日本では、

 人流抑制などへの国民の理解と協力が不可欠である。

 残念ながら、首相と国民との間には、この信頼関係が成り立っていなかったと言わざるを得ない。‥‥』


『‥‥コロナ禍の政権運営にかつてない困難さが伴うことは国民も分かっている。

 だからこそリーダーとしての資質が試された。

 自らの言葉で現状と今後のシナリオを包み隠さず語り続け、

 一人一人の共感を広げる姿勢が何より求められるはずだった。‥‥』


はぃ‥、どちらも指摘していることは、同じ趣旨(コミュニケーション不足)だと理解しています。

そして、「菅総理には菅官房長官がいない」との指摘がかつてあったように、

強力な「参謀」といえる人材がいなかったことも、その遠因に挙げられるような気がしています。


個人的には、菅総理には総裁選を正々堂々と戦ってほしかったので、退陣表明は残念ですが、

危機時におけるリーダーの資質を考える点で、次世代に「良い教材」を提供していただいたと思います。

偉そうなことを書いてスミマセン‥‥。

勝負を分けた瞬間

目覚めた時から降り続いていた雨は、ようやくお昼過ぎに止みました。


さて、昨日のこの日記で、「今はとりあえず、自民党の幹事長人事に注目したいと思います。」と書いたら、

今日は、突然に、菅総理が総裁選不出馬の表明‥‥です。

う~む‥‥。ひょっとして、党の要の幹事長を引き受けてくれる人がいなかったのかしら?

「総裁選に出馬を予定していたが、新型コロナ対策と選挙との両立は莫大なエネルギーが必要。

新型コロナ対策に専任したい」との発言は、私には空しい弁解のようにしか聞こえませんでした。


そして、日経新聞電子版には、さっそく「首相退陣、勝負を分けた3つの瞬間」

というタイトルの記事が配信されていました。

記事によると、2020年9月16日に政権が発足してから、この一年の間に、

「勝負を分けた瞬間が3つあった」とのことでした。

一つは、衆院解散の判断。二つ目は、コロナ対策。三つ目は、8月22日投開票の横浜市長選。


現在と比べると新型コロナウイルスの新規感染者数が少なかった

20年秋ごろに解散してまず4年の時間を確保し、ワクチン接種を遅滞なく進め、

そして、地元横浜での選挙に深入りしなければ、今日のような事態には陥らなかったということなのかな‥?


田中角栄元総理の退陣表明は、安岡正篤先生が添削したとされる

「わが国の前途に思いをめぐらすとき、私は一夜、

沛然として大地を打つ豪雨に心耳を澄ます思いであります」‥‥。

菅総理は、退陣を決意するに当たって、どのような事象に心耳を澄まされたのでしょうか?


いずれにしても、菅総理のこの一年間を、詳細に総括・評価する本が出版されることを、

今から期待したいと思います。

冷めた感覚はダメかしら?

未明に雨が降り、日中は雨模様の一日となりました。

日差しがないので気温も上がらず、久しぶりにエアコンなしで昼間を過ごすことができました。


さて、今日の日経新聞「政治・外交」欄の「自民党総裁選を語る」で、

谷口尚子・慶大大学院教授が、次のようなことを述べられていました。

『今回の総裁選は衆院選を控える時期に開かれるのが特徴だ。

 自民党総裁に求められる資質として党内のリーダーシップや官僚を扱う行政能力に加え、

 選挙の顔として勝てる候補かどうかが問われることになる。

 衆院選の争点は新型コロナウイルス対策だ。

 国際的な比較で日本国民の政府に対する信頼は低く、コロナ対応を巡り政府が責められる構図が定着した。

 感染対策は現実的な方策を粛々と進めるしかない。

 菅義偉首相や立候補を表明した岸田文雄政調会長は発信力に課題があるように映る。

 党内に全ての資質を備えた候補はいないかもしれない。

 日本の未来を担うための議論を国民に見せる場が総裁選だといえる。立候補者は多い方がいい。

 首相に必要なのはコロナ下で国民が苦境を共に乗り越えたいと思えるかになる。

 議論を通じ感染防止策などで国民の理解を得ていく場になればいい。国民を巻き込む説得力が必要になる。

 自民党からその意思はまだ感じられない。‥‥』


はぃ‥、この「コロナ下で国民が苦境を共に乗り越えたいと思える」首相なのですが、

いったい、どのような言葉を発信し、どのような行動をとれば、

国民が苦境を乗り越えたい、と思えるようになるのでしょうか?

おそらく、私を含めて国民の多くは、

「誰が首相になっても同じ」と、現実的な感覚というか、冷めた感覚を持っているような気がします。

(なにせ、相手は目に見えないウイルスですから‥‥)

こんな感覚じゃダメなのかな? 今はとりあえず、自民党の幹事長人事に注目したいと思います。

苦しみの中の宝石のような言葉

NHKテレビテキスト、100分de名著『戦争は女の顔をしていない~アレクシエーヴィチ』を読了し、

同時に、番組の視聴も終えました。

「戦争は女の顔をしていない」は、第二次世界大戦中、ソ連軍に従事した女性たちの姿を、

500人を超える証言者の声によって描き出した作品で、

今回のテレビテキストの執筆者で番組の指南役は、ロシア文学研究者の沼野恭子さんでした。


番組の最終回で、司会の安部みち子アナウンサーが、この本を読む「意義・意味」について尋ねたところ、

沼野先生は、おおむね次のようなことをおっしゃっていました。

『一つは、多様な文化が共生できる社会にするためには、まず他者の声を聞き理解すること。

 二つは、わが事として引き受ける、自分のこととして考えること。

 つまりは、他者の声を聞いて、それをわが身に引き受けることの大事さを、この本から学ぶことができる。』


また、番組の最後には、アレクシエーヴィチさん本人からの、

次のような番組へのメッセージが紹介されました。

『この本でとても重要だと私が考えるのは、戦争に対する別の視線、女性の視線です。

 女性たちは戦争の正当性を見つけられなない、見つけ出したいとは思わないということです。

 女性たちは命あるものを、「生きている命」を守るのです。

 血・武器・暴力の時代は去ったのです。

 命のとらえ方を今までとは違うものに切り替えるべきなのです。

 人の命は物事を測るものさしであってはならないのです。

 そしてこれが、「戦争は女の顔をしていない」の軸となる考えなのです。』


100回以上に及ぶ番組の中で、著者ご本人のメッセージが披歴されたのは、

今回が初めてではないでしょうか‥‥。とても力強いメッセージだったと思います。

なお、テレビテキストの中では、

『真の苦しみの中にいる人が絞り出すようにして語る言葉は、崇高なものになる。

 証言の中には、たしかにそう感じさせる、宝石のような言葉があります。』という一節が、

強く印象に残っています。


この作品もぜひ読んでみたいと思いますが、その前に、目の前にある積読本をなんとかしなければなりません。