しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

組織とキャリア観

今月15日の日経新聞「経済教室」は、「人事の経済学」の第4回目で最終回。
執筆者は竹内規彦・早稲田大学准教授で、
論考のタイトルは『「多様な個人」生かす組織を』でした。

一言で「キャリアの成功」といっても、内容に差があるのは、
その捉え方が個々人の価値観と密接に関わっていて、
おのおのが様々な形で定義していることに由来していると、
竹内准教授は述べられています。

そして、多様化する個人のキャリアに対する考え方を分類可能な形で整理すると、
次のように大きく4つに分けられると説明されています。
「キャリアって、どういう意味なの?」と質問されても
なかなか答えるのは難しいと以前から思っていましたが、
この論考を読んで少しスッキリしました。

 第1は「階層的キャリア」。
 ピラミッド型の組織構造のなかで自身の相対的な地位を高め、
 責任の範囲を拡大し、影響力を高めることを志す。
 この志向が強い人は、いかに着実に組織や社会の「タテ」の階段を上っていくかが
 キャリア成功を判断する基準となる。

 第2は「専門的キャリア」。
 自身の「天職」といえる仕事領域を見つけ出し、
 そのなかでより高い専門性(技術や能力)を追求する。
 これを重視する人は、自身の仕事の専門性をどの程度高められたかによって
 個人のキャリア成功を評価する傾向にある。

 第3は「スパイラル・キャリア」。
 比較的早い段階で経験した自身の仕事の領域を核にしつつも、
 その後5〜10年程度ごとに新たな領域に挑戦し、
 より幅広いスキルや知識、能力を形成する。
 まさに中心から周辺へと同心円状に広がっていく「らせん状」に、
 キャリアを形成する考え方。
 この考えを持つ人は、歳月を経て得られるスキルや知識などの広がりと、
 そこから得られる自己の連続した成長感を大切にする。

 第4は「変動的キャリア」。
 自身にとって新しいことや変化とは何かを重視し、新しい経験を求め、
 前向きに仕事領域の変更や転職を繰り返す考え方。
 スパイラル・キャリアとの大きな違いは、前職や以前の職務経験とその後に、
 秩序だった連続性や一貫性を求めない点。近年よくみられる。

う〜ん、なるほど、そういうものですか。なんとなく理解できました。
私としては、「スパイラル・キャリア」が、
人間として成長をしていくうえで理想的な姿のように思われます。

『最近でも、求められる人材像の一つとして
 「T字型人材(T字の縦棒に相当するコアの領域を持ちつつも、
 横棒に相当するスキルや知識の幅をもつ人材)」という言葉がよく使われるが、
 この考え方はスパイラル・キャリアと整合する部分も多い』
という説明がありました。

また、論考では、
様々なキャリア観を持つ多様な個人が「組織の一員」となるためには、
職場の内部者(上司・同僚)の役割が重要であることが
最近の研究で数多く報告されていて、
人心を統合するリーダーの育成が、
これまで以上に求められているという記述もありました。

「組織」と「キリャリア観」。いろいろと勉強になった論考でした。