今日16日の日経新聞「オピニオン」欄の「時論」に、
米素材大手スリーエム(3M)のインゲ・チューリン会長兼最高経営責任者(CEO)への
インタビュー記事が掲載されていました。
「右肩上がりの成長」はすべての企業の目標だけれども、
実現できる企業は多くなく、数少ない事例のひとつが
2016年まで58年も続けて増配中の米素材大手スリーエム(3M)であると
記事の冒頭で紹介されていました。
その記事のなかで勉強になった個所を、いつものように抜き出してみました。
・3Mの商品は工業用の研磨材から医療材料、
「ポスト・イット」のような文房具まで幅広いが、
総じて言えば、既存の商品は陳腐化によって毎年4%程度売り上げが逓減していく。
その結果、5年経つと2割減る。
その穴を埋め、さらに会社全体の売上高を押し上げるには、
切れ目なくイノベーションを起こし、製品群の新陳代謝を活発にしないといけない。
・当社のイノベーションには2種類ある。
一つはカスタマー・インスパイアード(顧客触発型)イノベーションと呼んでいる、
お客さんと一体になって新しいモノを創る仕組みだ。
日本での最近の成果としては、電車の外装を丸ごとラッピングする
特殊フィルム素材がある。東京メトロやJR東日本向けに開発した。
・もう一つのイノベーションの類型は、
「社内用語でインサイト・ツー・イノベーション(洞察による革新)と
名付けたもので、これは特定顧客向けというより、
もっと幅広く新たな市場の創出を狙ったものだ。
例えば従来製品に比べて耐久性を4倍に高めた内装用の研磨材や
「アイガード」という患者の血液などから医療従事者の目を守る防護具は、
日本の建設現場や病院でも広く使われている
・革新を生み出す一つの方法論に「エスノグラフィー(行動確認)」がある。
技術者が実際にユーザーの立場を体験して、開発テーマを見つけ出す手法だ。
・3Mには「2つの15%」がある。
まず年間18億ドル(約2050億円)の研究開発投資のうち
15%は基礎的な研究に振り向け、何をテーマにどう進めるかは、
リサーチ部門の自由に委ねている。私たち経営陣はあれこれ口をはさまない。
・もう一つは、個々の技術者に業務時間の15%は会社の命じた仕事ではなく、
自分の好きな研究や開発に費やすよう奨励していることだ。
会社に内緒で作業するので「ブートレギング(密造酒づくり)」とも呼んでいるが、
この活動から多くのヒット商品が生まれている。
大変失礼ながら、3Mの商品といえば、
私は付箋の「ポスト・イット」しか知りませんでした。(スミマセン…)
記事を読んで再認識したのは、例えば、東レの炭素繊維の研究開発のように、
我慢強く基礎的研究に投資し続けることと、
それを許す経営判断と組織風土がとても重要だということです。
これは、組織における人材を、コスト(費用)ではなくアセット(資産)と考えるのと
相通じるものがあると思います。
企業の投資も人材の育成も、長い目で見ることが大切なのですね…。