今日の朝日新聞デジタル版「耕論」は、『鏡を見よう、日本』というタイトルで、
いつものように有識者3人の方にインタビューした内容でした。
私はそのなかでも、仏人類学者・歴史学者エマニュエル・トッドさんの
次のような論評がとても勉強になりました。
『1990年代に初めて訪日したとき、将来の少子化など人口動態の問題を語る人は多かった。
欧州より意識が高いと思いました。来日はこれまで16、17回になりますが、今はこう考えています。
人口動態危機について、日本人には何も行動しないまま議論し続ける能力があると‥‥。
国力を増したければ人口動態危機に取り組むはず。それをしない姿勢をナショナリズムとはいえません。
日本の問題は、女性が働くと子どもをつくれなくなるというところにあります。
家族人類学の視点から見ると、日本は長男が家を継ぐ直系家族の国です。往々にして、男の方に特権がある。
消えつつある家族形態ですが、その価値観はゾンビのように今も残り続けています。
現代日本で、男尊女卑が激しいわけではない。
女性は高等教育を受けられるし、職業上のキャリアを積み上げることもできる。
けれどキャリアを積もうとすると子どもをつくりにくい。「あれか、これか」の二者択一を迫られる。
日本の場合、直系家族というシステムが頂点に達したのは明治期で、近代化のスタートと重なりました。
テクノロジーを次世代に伝えながら完成するには効果的でした。競争にも強い。
同じく直系家族のドイツは近代化へ離陸すると、わずかの期間で英国より強国になった。
明治日本の離陸も恐るべきものでした。しかし、これまでのやり方を断絶し、
システムを大きく転換するときに直系家族の価値観は困難に直面します。方向を変えられないのです。
~ (中略) ~
人口動態危機の解決策として優先するべきは、まず女性が快適に働き、子どもを産むことができる政策です。
未来に向けて豊かになるために、政府は保育園整備や児童手当に巨額の予算を投じるべきです。
今すぐ豊かになることしか視野にない政策は、将来、国を貧しくします。』
う~む、なるほど‥‥。
日本は、外部からの視点では、何も行動しないまま議論し続ける国に見えるのですね。
ご指摘のとおりだと思います。
また、「これまでのやり方を断絶し、システムを大きく転換するときに直系家族の価値観は困難に直面します。
方向を変えられないのです。」というご指摘も、なんとなく理解できます。
でも、よくよく考えてみると、これは私のことを指しているのかもしれません‥‥。
「口先ばかりで何も行動しない」「頑固で融通が利かず、新しいことにチャレンジしない」‥‥。
冷静に振り返ると、反省ばかりの人生です。