『人生の役に立つ聖書の名言』(佐藤優著:講談社文庫)を読了しました。
本書を読んで、聖書の言葉の真意を何も知らずに、勝手に解釈をしていたことを知りました。
例えば、「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。」という言葉の
「こころの貧しい人」は、
『「こころの貧しい人」とは、経済的困窮者ではない。
自分の心の中に救済の根拠がないことを自覚している人を指す。』
また、「悲しんでいる人たちは、さいわいである。彼らは慰められるであろう。」という言葉の
「悲しんでいる人」は、
『「悲しんでいる人」とは、何か不幸なことがあって泣きそうになっている人のことではない。
現在が苦難と悲劇の時であるということをリアルに受け止めて、
神による助けを心の底から望んでいる人のことだ。』
それぞれの言葉に、著者の上記のような解説があり、聖書の言葉の奥深さを知った次第です。
なお、本書で紹介されている聖書の言葉で、私の心に最も響いたのは、
「愛は寛容であり、愛は情深い。また、ねたむことをしない。
愛は高ぶらない、誇らない、不作法をしない、自分の利益を求めない、いらだたない、
恨みをいだかない。不義を喜ばないで真理を喜ぶ。
そして、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐える。」という言葉で、
著者の次のような解説がありました。
一切の見返りを求めない一方的な愛である。このような愛の特徴がここに列挙されている。
果たして、人間はこのうよなアガペーを持てるのであろうか。私は持てると考えている。
親子の愛情、恋人同士の愛情、友情の中でも、一瞬だけかもしれないが、
相手からの見返りを一切求めないアガペーとしての愛を誰もが示すことができる。
重要なのは、その瞬間のことをきちんと記憶しておくことだ。
親子、夫婦、友人関係がぎくしゃくしたときに、かつてアガペーの瞬間があったことを思い出せば、
決定的な決裂を避けることができる。』
著者は、この本の「まえがき」で、
『キリスト教徒でない日本人にとっても、誰もが避けられない挫折や逆境、
仕事や人間関係の悩み、人生の岐路に立つとき、聖書の言葉にふれることを勧めたい』
と述べられていました。
その言葉どおりに、「ふれてよかった」と思える一冊でした。
- 作者:佐藤 優
- 発売日: 2020/01/15
- メディア: 文庫