今日の日経新聞「読書」欄の「リーダーの本棚」は、翁百合・日本総合研究所理事長でした。
翁さんの座右の書は、河合隼雄さんの「こころの処方箋」とのことで、次のようなことを書かれていました。
『座右の書は河合隼雄さんの「こころの処方箋」です。
気づきをくれる55の短編が載っていて、悩んだり迷ったりしたときに読んでいます。
臨床心理学のたいへんな学者さんなのに「人の心などわかるはずがない」という章から始まっています。
心と向き合うのは覚悟が必要なんだということを前提として、断定的ではなく、やさしい言葉で書いている。
例えば「道草によってこそ『道』の味がわかる」という言葉は、
目先のことにとらわれず、さまざまな経験や苦労が後で生きてくるということを教えてくれる。
「二つの目で見ると奥行きがわかる」には、何事も客観的に見ていこうという気づきがあります。
私は日本総合研究所の主任研究員だった1999年に、
小渕恵三首相が設置した「21世紀日本の構想」という懇談会のメンバーに呼ばれましたが、
この会議の座長が河合先生でした。気さくでユーモアがあって、しょっちゅう冗談をおっしゃっている。
あたたかいお人柄の方でした。
この本は「これが答えだよ」というものを出してくれるのではありません。
でもめくっていくと、考えさせられるヒントがあります。
30代で読んだときには分からなかった言葉が、いま読み返すと深いなあと思うこともあります。
「100%正しい忠告はまず役に立たない」とか「うそは常備薬、真実は劇薬」とか、実に面白い。‥‥』
はぃ‥、私にとってもこの本は、「座右の書」とまではいかなくても、お気に入りの一冊です。
私が好きなというか、肝に銘じている言葉は、「男女は協力し合えても理解し合うことは難しい」。
『‥‥われわれは男女が互いに他を理解するということは、ほとんど不可能に近く、
また、時にそれは命がけの仕事と言っていいほどのことであることを、よくよく自覚する必要がある。‥‥』
『‥‥男女が理解し合うということは実に大変なことであり、それは一般的に言って、
中年になってからはじまると言っていいだろう。
そして、難しさをよく自覚していると、少しの不理解で驚いたり、怒ったりするのではなく、
それから迎える老年のために、あらたな気持で少しずつ努力を続けてゆこうという気にもなるだろう。』
河合先生は、このように述べられています。
言葉では理解できても、何年たっても、一向にあらたな気持で努力できない自分がいます。
自覚が足りないことを自覚しています‥‥。