今日の日経新聞一面コラム「春秋」で紹介されていた
女子柔道の元世界王者、山口香さんの言葉が強く印象に残りました。
そのコラムの全文は、次のような内容でした。
『ここ一番の勝負の場で、絶対王者といわれるアスリートが敗れ去る。
そんなとき人は「魔物が潜んでいた」などと評する。
プレッシャーの怖さ、普段通りの力を出し切ることの難しさ。
舞台を後にする選手の心中を思えば胸が痛むが、これもスポーツの奥深さであろう。
これまでとは次元も勝手も違う魔物に、東京五輪は襲われた。
世界的な新型コロナの感染拡大と、それによる開催延期や無観客試合。
コロナ下での生活を送ってきて思うのは、
この魔物は人間の猜疑心(さいぎしん)や罵り合いが大好物なのではないか、ということだ。
魔物にそそのかされるように私たちは、分断の道を歩んだ気もする。
開会式も終え、東京大会の競技は熱を帯びてきた。
「五輪が始まれば国民は盛り上がる」。政界から漏れ伝わる、こんなたくらみには乗らない。
それでも、それぞれに苦しい環境のなか海外から集まった選手たちを見れば、素直に応援したくなる。
迎える日本はきのう、お家芸の柔道男女で、2人が金銀のメダルに輝いた。
「平常心で戦えないのが五輪だが、五輪でしか出ない力もある。魔物もいるが魔法もある」。
女子柔道の元世界王者、山口香さんが以前、本紙に綴(つづ)った言葉だ。
応援する側としてしばし、五輪の魔法を心から楽しむのも悪くない。
政府や五輪組織委員会が自ら招いた数々の魔物については、いずれきっちり総括してもらおう。』
山口さんの「平常心で戦えないのが五輪だが、五輪でしか出ない力もある。魔物もいるが魔法もある」
という言葉は、けだし名言だと思います。
体操鉄棒男子の内村航平選手のまさかの落下、水泳男子の瀬戸大也選手のまさかの予選落ち‥‥。
これらは「魔物」の仕業としか思えません。
一方で、今日行われた、卓球混合ダブルス準々決勝での水谷隼選手・伊藤美誠選手の大逆転劇や、
ソフトボール女子の対カナダ戦における、後藤希友選手の6連続三振とサヨナラ勝ち‥‥。
これらは、山口さんの「五輪でしか出ない力」「魔法」そのものだと感じました。
五輪の魔法を楽しむ私は、当分の間、興奮のあまり、眠れない夜が続きそうです‥‥。