久しぶりの読書感想文です‥‥。
長い時間をかけて、ようやく『カラマーゾフの兄弟(全5巻)』
(ドストエフスキー著、亀山郁夫訳:光文社古典新訳文庫)を読み終えました。
数え切れないほどの印象深い記述の中から、あえて2つを選んで、この日記に書き残しておきます。
『‥‥何かよい思い出、とくに子ども時代の、両親といっしょに暮らした時代の思い出ほど、
その後の一生にとって大切で、力強くて、健全で、有益なものはないのです。
きみたちは、きみたちの教育についていろんな話を聞かされているはずですけど、
子どもの時から大事にしてきたすばらしい神聖な思い出、もしかするとそれこそが、
いちばんの教育なのかもしれません。
自分たちが生きていくなかで、そうした思い出をたくさんあつめれば、人は一生、救われるのです。
もしも、自分たちの心に、たとえひとつでもよい思い出が残っていれば、
いつかはそれがぼくらを救ってくれるのです。』(カラマーゾフの兄弟5、P58)
『‥‥おまえには言っておくが、そういう残虐趣味が、女にはひそんでいるんだよ。
おれたちが、なくちゃ生きられない天使みたいな女たちがみんなそうなんだ。
いいか、アリョーシャ、ざっくばらんに言うぞ。どんなまともな男でも、
結局は女の尻に敷かれて生きざるをえないってことだ。これがおれの信念なんだ。
信念っていうんじゃなく、実感だな。
男は、寛大じゃなくちゃいけない、かといってそれで、男の体面が汚されることにはならんのだよ。
英雄にしたってそう、シーザーだってそう!しかし、だ、それでも謝っちゃいかん。
ぜったいに、何がなんでも。この掟を覚えておけよ。兄貴のミーチャがじきじきに教えることだぞ。』
(カラマーゾフの兄弟4、P238)
この全5巻の魅力は、「亀山先生の読みやすい訳文」、「登場人物のしおり付きという配慮」、
「それぞれの巻末の親切な読書ガイド」などなど盛りだくさんです。
特に、5巻の「ドストエフスキーの生涯」と「解題」を読めば、より一層理解が深るよう配慮されていて、
読者にとっては、とても有難い一冊になっています。
以前に読んだNHKテレビテキスト、亀山先生解説の100分de名著「カラマーゾフの兄弟」には、
『綴られる恋愛・欲望・信仰・黙過・使嗾、そして殺意。物語の背後にある「拝金主義」と「二枚舌」ーー。
重層的な人間の深層を描き出すロシア文学の金字塔‥‥』との紹介文がありました。
今回、それらを十二分に堪能できたのではないかと思っています。
特に、「神は存在するのか」といった「信仰」について‥‥。