しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

ロシアと「受苦の精神」

今日の愛媛新聞に、亀山郁夫名古屋外国語大学長が、

ウクライナ侵攻の正体」というタイトルの論評を寄稿されていました。

そこには次のようなことが書かれていました。少々長くなりますが引用させていただきます。


『‥‥プーチンを駆り立てている欲望の正体をひと言でいえば「統一」による一元的世界の構築にある。

 その夢に肥やしを与えたのが、「ユーラシア主義」だった。

 かつて社会主義の理念に結ばれた同胞国を、統制経済と正教のもとに一元化し、

 西欧でもアジアでもない、独自の精神共同体として再創造する。

 そこには、数々の歴史的苦難(とくに独ソ戦)を耐え抜いてきた国家の

 本源的力に対する危険な「信仰」が脈打っている。

 そして「統一」の幻想にとって最大の障碍が、血を分けた兄弟国ウクライナだったわけだ。

 兄弟どころか、歴史的には、母に近い存在といっても過言ではない。

 思うに、この「母」をとり戻す夢が、妄執と化した。

 今となって、北大西洋条約機構NATO)の東方拡大に対する恐怖は、

 (少なくとも私の耳には)口実のようにしか響かない。

 それよりも、精神的共同体の夢、その盟主(=救世主)として君臨する夢を潰されるほうが、

 はるかに怖かったのではないか。

 しかも、半ば退路を断たれた彼が求めうる唯一の免罪符は、まさにその夢の実現にしかないのだから。

 では、なぜ、この、時代錯誤的とも思える彼の執念に対し、批判の声が高まらないのか。

 権力による復讐のを恐れるからだろうか。たしかにそれもある。

 しかしその恐怖には、根深いロシアの闇が潜んでいるように思えてならない。

 キリスト教受容以後千年の歴史の間に培われた、受苦の精神。

 厳しい自然と広大な土地に生きる彼らの魂には、

 当然のことながら、共生とサバイバルのための知恵が刷り込まれた。

 圧制に対する驚くほどの「寛容」がその証である。

 圧制に対する不満は、一口話の笑いのなかに自足的に回収された。

 思うに、プーチンに取りついた「悪霊」は、まさにこの、受動的な精神性のうちに胚胎したのだ。‥‥』


う~む、なるほど‥‥。

根深いロシアの闇とは、「受苦の精神」にあったのですか‥。

これってたしか、亀山先生がご専門の、ドストエフスキーの「世界観」ですよね。

この精神性のなかでは、ロシアではプーチン批判の声は高まらないのですね。

また、圧制については、「寛容」というより「諦観」のほうが、私には理解しやすいような気がします。


ところで、ポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ (COTEN RADIO)」で、

「【特別編 緊急収録】ウクライナとロシア」の視聴を、今日ようやく終えました。

全六回シリーズで合計5時間20分弱の大作、力作です。

とにかく内容が素晴らしく、とても勉強になりました。

ウクライナとロシア、それぞれの歴史や、世界での立ち位置などが理解できたと思います。

ぜひ一度、視聴されることをお勧めします。