夏を訪れを思わせるような暑さとなりました。
何を着たらいいのか悩みます。そんなにたくさん衣服は持ち合わせてはいないけれど‥。
著者の小説を読むのは、ずいぶん昔に読んだ「沈黙」以来です。
本書のなかでは、妻を癌で亡くした磯辺という男性が語る、次の文章が強く印象に残りました。
『復讐や憎しみは政治の世界だけでなく、宗教の世界でさえ同じだった。
この世は集団ができると、対立が生じ、争いが作られ、相手を貶めるための謀略が生まれる。
戦争と戦後の日本のなかで生きてきた磯辺はそういう人間や集団を嫌というほど見た。
正義という言葉も聞きあきるほど耳にした。
そしていつか心の底で、何も信じられぬという漠然とした気分がいつも残った。
だから会社のなかで彼は愛想よく誰ともつき合ったが、その一人をも心の底から信じていなかった。
それぞれの底にはそれぞれのエゴイズムがあり、そのエゴイズムを糊塗するために、
善意だの正しい方向だのと主張していることを実生活を通して承知していた。
彼自身もそれを認めた上で波風のたたぬ人生を送ってきたのだ。
だが、一人ぼっちになった今、磯辺は生活と人生とが根本的に違うことがやっとわかってきた。
そして自分には生活のために交わった他人は多かったが、人生のなかで本当にふれあった人間は立った二人、
母親と妻しかいなかったことを認めざるをえなかった。』
なるほど、「生活と人生とが根本的に違う」ですか‥。
すべてを飲み込み流すインドの偉大なガンジス河を通して、
生と死、唯一神と汎神、輪廻転生など、「宗教」について多々学ぶところがありました。