しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

信念を貫く生き方を学ぶ

今、私の手許に、『堂々たる政治』(新潮新書)と

民主党が日本経済を破壊する』(文春新書)という二冊の本があります。

 

この二冊の本の著者である与謝野馨さんが、

78歳でお亡くなりになったことを、先日、日経新聞デジタル版の速報で知りました。

今回、改めて書棚から二冊の本を取り出し、ページをめくっていると、

民主党が日本経済を破壊する』(文春新書)の「おわりに」に、

次のようなことが書かれていました。

 

『私は三つの分野において、あとの世代にいい国を残したいと願う。

 すなわち、経済、財政、国民の安心安全である。

 経済についていえば、日本の経済はしょせん資源のない国の経済であり、

 国民の頭脳と汗で支えられ、貿易立国としてしか存在できないと思う。

 そこには経済を支える他国にない立派な技術力、独創性がなければならない。

 近年これが忘れがちであったということには警鐘乱打しなければならない。

 中国をはじめめざましい活力をみせている新興国に負けないで

 貿易立国を存続させていくためには国も企業も

 技術や研究に相当の力をいれてゆく必要がある。

 「金が金を生む」というバカげた考えは捨て、

 「モノづくり」が日本の唯一の道であるという原点に立ち返る必要がある。

 富は天から降ってこない。

 そして財政は深刻である。勿論、政治の責任が第一であるが、

 国という機関は煎じ詰めれば企業や個人の所得の一部を

 こっちからあっちへと移転するだけの機能しか持っていない。

 このままの財政状況を続ければ破綻が来ることは目に見えている。

 実は財政こそが持続可能な社会保障制度をも支えているのである。

 富を生みだす努力の前に、富の分配だけを論じるのは

 政治としては順序が逆である。

 国民が安心して安全に暮らせる、そして将来の展望をもてる、

 そのような社会を作ることが真の政治責任であり、

 甘いことを次々と国民に提示していれば

 いずれ厳しい歴史の審判を受けることになると思う。』

 

この本は、2009年8月の衆院選によって鳩山民主党政権が誕生して

100日余りが過ぎた頃に書かれたものですが、

与謝野さんが「おわりに」で述べられている内容は、

今も、そして今後も、政権担当政党と政治家が心すべきものだと感じます。

 

そして、与謝野さんのご逝去を受けて、日経新聞の清水真人編集委員

今月24日の「政治アカデメイア」に、次のようなことを書かれていますが、

これがもっとも与謝野さんのお人柄と功績をまとめられていると思うので、

長文になりますが、この日記に書き残しておきたいと思います。

 

衆院に初当選した直後、

 39歳で血液のがんの一種である悪性リンパ腫と診断された。

 以後、断続的に4つのがんを告知され、死と向き合い、

 人知れず闘病を抱えた政治家人生。

 「いつ頃からか、病と闘う私と、政治活動をする私を

 無意識のうちに分けて生きてきた。それらを冷ややかに客観視する私も現れた。

 常に3人の自分がいる」とどこか冷めた自分を語っていた。

 歌人与謝野鉄幹・晶子夫妻の孫でもあった。

 「芸術や文学の才能は一代限り。受け継ぐものじゃない」と自認した。

 でも、日露戦争に出征した弟に向けて「君死にたまふことなかれ」と

 堂々と反戦を歌った晶子の時代や権力に流されない気概は確かに受け継いでいた。

 必要不可欠と確信した消費税・社会保障改革を実現させるため、

 「変節」批判を聞き流して民主党政権に協力したのも、その表れだ。

 「劫初(ごうしょ)より 作りいとなむ殿堂に われも黄金の釘(くぎ)一つ打つ」

 これは与謝野が「政治家としていいな」とお気に入りだった晶子の歌だ。

   歴史ある和歌の世界に、一本でも「黄金のクギ」、

  つまり、何か価値のあるものを打ち込みたい、という意思を詠んだ一首である。

 晩年、そんな晶子にならって

 「政治の世界で一本でも黄金のクギを打てたらいい」と述懐していた与謝野。

 あらん限りの「職人芸」を繰り出して

 道筋をつけたはずの消費税率10%は未完だ。』

 

ご本人は「一本の黄金のクギ」と謙遜されていますが、

その信念をあくまで貫くという生き方には、

意志薄弱の私には、多くの尊敬すべきところ、学ぶべきところがありました。

ご冥福を心からお祈りします……。

 

民主党が日本経済を破壊する (文春新書)

民主党が日本経済を破壊する (文春新書)

 

 

追記

下の写真は、自転車に乗った6歳になったばかりの孫娘です。

我が家の玄関先で撮りました。

今日もグランマと、この自転車に乗って買い物に出かけていきました。

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