しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

生活と人生の根本的な違い

夏を訪れを思わせるような暑さとなりました。

何を着たらいいのか悩みます。そんなにたくさん衣服は持ち合わせてはいないけれど‥。


さて、『深い河』(遠藤周作著:講談社文庫)を読了しました。

著者の小説を読むのは、ずいぶん昔に読んだ「沈黙」以来です。

本書のなかでは、妻を癌で亡くした磯辺という男性が語る、次の文章が強く印象に残りました。


『復讐や憎しみは政治の世界だけでなく、宗教の世界でさえ同じだった。

 この世は集団ができると、対立が生じ、争いが作られ、相手を貶めるための謀略が生まれる。

 戦争と戦後の日本のなかで生きてきた磯辺はそういう人間や集団を嫌というほど見た。

 正義という言葉も聞きあきるほど耳にした。

 そしていつか心の底で、何も信じられぬという漠然とした気分がいつも残った。

 だから会社のなかで彼は愛想よく誰ともつき合ったが、その一人をも心の底から信じていなかった。

 それぞれの底にはそれぞれのエゴイズムがあり、そのエゴイズムを糊塗するために、

 善意だの正しい方向だのと主張していることを実生活を通して承知していた。

 彼自身もそれを認めた上で波風のたたぬ人生を送ってきたのだ。

 だが、一人ぼっちになった今、磯辺は生活と人生とが根本的に違うことがやっとわかってきた。

 そして自分には生活のために交わった他人は多かったが、人生のなかで本当にふれあった人間は立った二人、

 母親と妻しかいなかったことを認めざるをえなかった。』


なるほど、「生活と人生とが根本的に違う」ですか‥。

すべてを飲み込み流すインドの偉大なガンジス河を通して、

生と死、唯一神と汎神、輪廻転生など、「宗教」について多々学ぶところがありました。

特に「輪廻転生」については、三島由紀夫の「豊饒の海」を想起させるものがありました‥‥。

便利で役に立つコンテンツ

孫娘が借りていた本を返却するため、伊予市の市立図書館に行ってきました。

折角の機会だから、放送大学のテキストを持参し、約2時間、「日本の思想」を勉強してきました。

建物が新しく落ち着いた雰囲気なので、とても集中できました‥。


そして今日は、NHKラジオ「マイあさ!」の「マイ!Biz」に、

「かんべえ」さんが出演し、「物価と賃金の好循環 何が必要か」というテーマでお話しをされました。

この番組は「かんべえ」さんをはじめ、講師陣がとても充実していて、お勧めです。


毎朝、この番組とポッドキャストの「News Connect~あなたとつなぐ5分間」を聴けば、

国際政治や経済情勢など、時事問題の理解が進みます。

それぞれ10分以内という、便利で役に立つコンテンツに感謝しています‥‥。

虹始見(にじはじめてあらわる)

今日は氏神神社の清掃活動に従事してきました。

今の私は、毎月14日と毎月末の2回だけは早起きをして、軽い肉体運動をしています。

今は新芽との入れ替わりの季節。大量の落ち葉が境内を埋め尽くしていました。


そして今日は、七十二候の「虹始見(にじはじめてあらわる)」です。

明日からはお天気は下り坂のようです。

くっきりとした「春の虹」を見ることができるかしら‥‥?


追記

阪神は中日に「2」対「1」で辛勝しました。

打順を見てびっくり仰天。岡田監督の悩み多き心中がうかがい知れます。

今の阪神の不調の主たる要因は、森下、大山、佐藤という主力選手の打撃不振。

スカッとした勝利を期待しています。頑張れ阪神タイガース!!‥‥。

「来世的生命主義」を学ぶ

『悪と往生~親鸞を裏切る「歎異抄」』(山折哲雄著:中央文庫)を読了しました。


親鸞を裏切る「歎異抄」、という本のタイトルに惹かれて購読しました。

本書のなかでは、「往生」と「還相(げんそう)」に関する記述が特に印象に残りました。

「往生」というのは、この世から浄土に赴くこと。

親鸞のいう「還相」は、浄土に往生した真の念仏者が、その浄土からふたたびこの世に帰還して、

阿弥陀如来の救済の事業に参加すること。


ところが著者の山折先生によると、唯円歎異抄第15条において「往生」のテーマのみをとりあげ、

「還相」を視野の外においただけでなく、歎異抄というテキストの全体からも、

「還相」に関する議論と問題意識を一切排除している、とのことでした。


う~む‥‥。さすがに歎異抄は奥が深い。

今の私はどんどん、歎異抄の深みに入っていきそうです‥‥。



追記

これまでに読んだ「親鸞」と「歎異抄」に関する本を、備忘録としてこの日記に書き残しておきます。

・私訳「歎異抄」(五木寛之著:PHP文庫)

・「親鸞(全6巻)」(五木寛之著:講談社

・「梅原猛歎異抄入門」(梅原猛著:PHP新書)

・100分de名著「歎異抄」(釈徹宗著:NHK出版)

熟成されたウイスキーのように胸底に染みる言葉

今日は父の命日です。お墓に行って、お線香を立ててきました。

父の容態が急変した際、延命措置を選択しなかったのは正しかったのか、

一年が経過した今でも自問・自責します。

たぶんこれからもずっと、折に触れて自問・自責することになると思います‥。


さて、町立図書館で閲覧した4月2日(日)の朝日新聞一面コラム「天声人語」は、

伊集院静さんの「新社会人へのメッセージ」に関する内容で、次のようなことが書かれていました。


『毎年、この時期はサントリーの広告を楽しみにしている。きのうの朝刊(一部地域のみ)にあった。

 「君は今、空っぽのグラスと同じなんだ」。新社会人に贈る作家・伊集院静さんからのメッセージである。

 グラスの大きさはどれも同じ、学生時代の成績なんてたかが知れている、

 肝心なのは仕事の心棒に触れることだ、金儲けがすべてなんてのは仕事じゃないーー。

 昨年他界され、これが伊集院さんの最終回だという。

 初回の2000年分の再掲だったが、熟成されたウイスキーのように胸底に染みる言葉だった。

 新社会人の手本となる人生だったか、といえばそうではあるまい。

 ギャンブルの金を出版社から前借りし、おまけに編集者に届けさせたという逸話には事欠かない。

 無頼と愚直が同居している。それが伊集院さんの魅力だった。

 陰影深いのも、苦みのある生き方ゆえんであろう。

 人生には、効率とは無縁なところから得られる何かかがある。‥‥』


なるほど、伊集院さんの言葉は、「熟成されたウイスキーのように胸底に染みる言葉」ですか‥。

私と同じように、コラムニスト氏が毎年、このサントリーの広告を楽しみにされていたことを知って、

なんだか嬉しい気持ちになりました‥‥。

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