しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

凛とした生き様

『蜩の記』(葉室麟著:祥伝社文庫)を読了しました。

凛とした読後感が残る、味わい深い本でした。
「自らの命の期限を定められてもなお、自らの生き方を変えない。」
そんな主人公の生きざまに、ただただ頭が下がる思いでした。

いくつか印象に残る名言やセリフがありましたので、書き残しておきます。

 ・「人は誰しも必ず死に申す。五十年後、百年後には寿命が尽きる。
   それがしは、それをあと三年と区切られておるだけのことで、
   さらば日々をたいせつに過ごすだけでござる。」

 ・親はこの世に生のある限り、子を守り、無事を祈り続けてくれるのだ。
  その思いに支えられて子は育つものなのだ、と親を亡くして初めて知った。

 ・「順慶院様は名君であられた。それゆえわたしは懸命にお仕えした。
   疑いは、疑う心があって生じるものだ。
   弁明しても心を変えることはできぬ。
   心を変えることができるのは、心をもってだけだ。」

 ・ひとは心の目指すところに向かって生きているのだ、と思うようになった。
  心の向かうところが志であり、それが果たされるのであれば、
  命を絶たれることも恐ろしくはない。

なお、この本は、
日経新聞「なんでもランキング」、
「読書の秋にお薦めの歴史小説」の第4位にランク付けされていました。
第1位は「村上海賊の娘」でしたが、
人生とは何かを考えさせられる意味で、
こちら(「蜩の記」)の方が中身の濃い本だと思います。

蜩ノ記 (祥伝社文庫)

蜩ノ記 (祥伝社文庫)