凛とした読後感が残る、味わい深い本でした。
「自らの命の期限を定められてもなお、自らの生き方を変えない。」
そんな主人公の生きざまに、ただただ頭が下がる思いでした。
いくつか印象に残る名言やセリフがありましたので、書き残しておきます。
・「人は誰しも必ず死に申す。五十年後、百年後には寿命が尽きる。
それがしは、それをあと三年と区切られておるだけのことで、
さらば日々をたいせつに過ごすだけでござる。」
・親はこの世に生のある限り、子を守り、無事を祈り続けてくれるのだ。
その思いに支えられて子は育つものなのだ、と親を亡くして初めて知った。
・「順慶院様は名君であられた。それゆえわたしは懸命にお仕えした。
疑いは、疑う心があって生じるものだ。
弁明しても心を変えることはできぬ。
心を変えることができるのは、心をもってだけだ。」
・ひとは心の目指すところに向かって生きているのだ、と思うようになった。
心の向かうところが志であり、それが果たされるのであれば、
命を絶たれることも恐ろしくはない。
なお、この本は、
日経新聞「なんでもランキング」、
「読書の秋にお薦めの歴史小説」の第4位にランク付けされていました。
第1位は「村上海賊の娘」でしたが、
人生とは何かを考えさせられる意味で、
こちら(「蜩の記」)の方が中身の濃い本だと思います。
- 作者: 葉室麟
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2013/11/08
- メディア: 文庫
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