『日銀と政治~暗闘の20年史』(鯨岡仁著:朝日新聞出版)を読了しました。
昨年末に発行された週刊東洋経済で、「今年最も推薦できる一冊」として、
本書が次のように紹介されていたので、「これは是非、買って読んでみよう」と思いました。
『本書はデフレ脱却というテーマに焦点を合わせ、
日本銀行でどのような政策決定が行われたのか、
また政府がどのように政策決定に関わったのかを詳細に記録した貴重なクロニクル(年代記)である。
~(略)~こうしたドキュメントにありがちな政治力学優先の分析に留まらず、
金融政策の背後にある理論的な説明も丁寧になされており、
読者が日銀の金融政策の本質を理解するうえで非常に役に立つ。』
この言葉のとおり、日銀の金融政策やその決定過程、
そして、日銀と政治との関わりが丁寧に描かれていて、とても面白く、しかも勉強になりました。
ところで、今日の朝日新聞デジタル版「MONDAY解説」に、
『日銀・黒田総裁再任へ 異次元緩和、続く険しい道』という記事が掲載されていました。
そこには、次のようなことが書かれていましたが、
本書を読了した後なので、金融記事の読み方が、我ながら少し上達(?)したような気がしています。
『2012年末の第2次安倍政権発足直後、経済再生に向けて放たれた「3本の矢」。
際立つのは1本目の異次元金融緩和だ。
その象徴の黒田総裁を代えることは政権基盤を不安定化させるリスクになりかねない。
安倍晋三首相の経済ブレーン、米エール大名誉教授の浜田宏一氏は昨秋以降、首相と面談。
「こっちの戦略が奏功しているうちは戦法を変えなくてよい」と進言した。
総裁の人選は政権主導で進められ、「意見を述べる機会はなかった」(日銀幹部)。
結局、麻生太郎財務相と菅義偉官房長官からの信頼も厚い黒田氏の続投でレールが敷かれた。
日銀総裁は、黒田氏の前任の白川方明(まさあき)氏までの3代は日銀出身者が続いた。
緩和を求める政権と慎重な日銀が意見を異にする場面もあった。
しかし13年に財務省財務官出身の黒田氏が就任した後は、政権との「蜜月」が目立つ。
リーマン・ショックの後遺症が癒え、米欧の中央銀行は金融緩和を縮小する「出口」へ
動きを進める。一方日銀は、物価目標の2%を達成できず緩和を今なお続ける。
政権の意向は「日銀に簡単に出口に向かわせない」というものだ。
19年10月に予定される消費増税後の景気下支えを日銀の緩和に期待するとの見方も根強い。
政権幹部は「市場参加者は「出口、出口」と騒ぐが、そんな段階にない」と話す。』
う~む、なるほど‥‥。どうやら日銀にとっての「出口」は、まだまだ先のようですね‥‥。
それはともかくとして、金融政策に興味がある方へ、是非お薦めしたい一冊です。
- 作者: 鯨岡仁
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2017/10/20
- メディア: 単行本
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