日経新聞で連載が続いている、野中郁次郎・一橋大学名誉教授の「私の履歴書」。
9月も下旬となって、連載の終わりが近づいてきましたが、
第25回目の今日は、「社外取締役制度」について、次のようなことが書かれていました。
『一橋大学に復帰後、一部の企業の求めに応じ、社外取締役に就いた。
富士通を手始めに、エーザイ、三井物産、セブン&アイ・ホールディングス、
トレンドマイクロといった企業である。
日本企業はガバナンス(企業統治)を強化するために米国にならって社外取締役制度を導入した。
私がどう行動してきたかはさておき、一般論で言えば、
社外取締役は必ずしもうまく機能していないのではないか。
社外取締役がさ末な問題に口を出しすぎると、事務局が準備に追われ、
場合によっては取締役会用の想定問答集まで用意するようになる。
大きな視野に立った本質論を展開しなければならない。
そして、取締役会の議論が細部に入りそうになったら、
「あとは任せたよ」と自制するバランス感覚が求められると思う。
私はそう努力してきたつもりだ。
実際には、企業経営に携わった経験がある社外取締役は細部に目を向け、
有識者の社外取締役は経営の実態を踏まえない空理空論を唱えがちだ。
議論はまとまらず、混乱が起きてしまう。
内容はどうであれ、取締役会で発言すれば議事録には記録が残り、
そんな考えで発言する人が多いと聞くが、時間の無駄ではないだろうか。
社外取締役制度は、賢さとバランス感覚を兼ね備えた人間を選んでこそ、
うまく機能するシステムなのだと考えている。』
う~む、なるほど‥‥。
社外取締役制度には、ご指摘のような課題があるのですね。勉強になりました。
元地方公務員の私は、この記述を読んで、地方公共団体の「外部監査制度」を思い起こしました。
野中教授は、「社外取締役制度は、賢さとバランス感覚を兼ね備えた人間を選んでこそ、
うまく機能するシステムなのだと考えている。」とおっしゃっていましたが、
地方公共団体の外部監査制度も同じのような課題を抱えているような気がします。
これら両制度に限らず、ある特定の制度の効果的な運用は、
最終的には人選に左右されるものなのでしょうか‥‥?
そうだとすると、今度は、そのような人材を確保するのが、極めて困難になるように思います。