しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

敵を知らず、己を知らず、大敵を侮る

長い日数をかけて、ようやく『ノモンハンの夏』(半藤一利著:文春文庫)を読了しました。

本書の中では、著者が「あとがき」で書かれていた、次の記述が強く印象に残りました。


『‥‥それにしても、日本陸軍の事件への対応は愚劣かつ無責任というほかない。

 手前本位でいい調子になっている組織がいかに壊滅していくかの、よき教本である。

 とはいえ、歴史を記述するものの心得として、原稿用紙を一字一字埋めながら、

 東京と新京の秀才作戦参謀を罵倒し嘲笑し、

 そこに生まれる離隔感でおのれをよしとすることのないように気をつけたつもりである。

 しかしときに怒りが鉛筆のさきにこもるのを如何ともしがたった。

 それほどにこの戦闘が作戦指導上で無謀、独善そして泥縄的でありすぎたからである。

 勇敢力闘して死んだ人びとが浮かばれないと思えてならなかった。‥‥』


この本を読み終えた後、改めて『失敗の本質~日本軍の組織論的研究』(中公文庫)の

ノモンハン事件~失敗の序曲」を読み直してみると、次のようなことが書かれていました。


ノモンハン事件は日本軍に近代戦の実態を余すところなく示したが、

 大兵力、大火力、大物量主義をとる敵に対して、日本軍はなすすべを知らず、

 敵情不明のまま用兵規模の測定を誤り、いたずらに後手に回って兵力逐次使用の誤りを繰り返した。

 情報機関の欠陥と過度の精神主義により、敵を知らず、己を知らず、大敵を侮っていたのである。

 また統帥上も中央と現地の意思疎通が円滑を欠き、

 意見が対立すると、つねに積極策を主張する幕僚が向こう意気荒く慎重論を押し切り、

 上司もこれを許したことが失敗の大きな原因であった。』


う~む‥‥。(絶句)

「いたずらに後手に回って兵力逐次使用の誤りを繰り返した」とか、

「敵を知らず、己を知らず、大敵を侮っていた」とか、

「統帥上も中央と現地の意思疎通が円滑を欠いた」とか、

これってまるで、新型コロナウイルスという「大敵」に対しての、

今の政府や地方自治体、そして私たち国民の、「対応の不手際」を指摘しているかのようです‥‥。


同じ「失敗」を繰り返さないよう、心したいと思います‥‥。

ノモンハンの夏 (文春文庫)

ノモンハンの夏 (文春文庫)