スポーツ・ノンフィクションの金字塔、『敗れざる者たち』(沢木耕太郎著:文春文庫)を読了しました。
著者の本を読んだのは、『テロルの決算』『危機の宰相』に次いで、これで三冊目となります。
「勝負の世界に何かを賭け、喪っていった者たち」という主題に沿い
5年間にわたって書きつづけられてきたという6篇の作品のなかで、
心の琴線に触れたのは、「三人の三塁手」と「長距離ランナーの遺書」の2作品でした。
そのほかの作品も、もちろん良かったです。
さらに、この本の魅力を高めていたのは、報知新聞記者・北野新太さんの、心のこもった「解説」でした。
北野さんはこの本について、次のように語っています。
『スポーツノンフィクションは経年への耐久性を厳格に問われる。
ある勝負をめぐるレポートなら1年後より1週間後に読んだ方が迫真性は高いに決まっているからだ。
ところが、刊行から45年が過ぎた今も本作には全く色褪せることのない力がある。
1976年の読者に与えた夢を、2021年の若者にも届けるだろう。
経年はむしろ「不変」という付加価値に導く武器として機能している。』
北野さんはまた、『沢木耕太郎は夢の作家である。』
『沢木耕太郎は自分の夢を生きる。そして人に夢を与える。「敗れざる者たち」の物語は続いている。』
とも述べられていました。
これ以上の「賛辞の言葉」はないように思います。